深夜、
中央刑務所に話し声が響く。
「ここまで呼び出すとは、何の用かしら?……キンブリー」
「はっはっは!呼び出すも何も、あなたが逃げ回るのが悪いんですよ。もともとあなたこちらの手の内でしょう?」
「勝手なこと言わないでくれる?私は自らあの研究に首を突っ込んだわけではないもの」
「研究に関わった時点であなたの負けですよ。いい加減認めたらどうですか?自分はこちら側だ、と。そう逃げ回っていてられるのも今のうちですからねぇ」
コツ、と女はヒールの音を立てて、壁にもたれかかる。
「あなたの娘………そう、シエル・カートン!彼女がセントラルであなたを探しているの、ご存知でしょう?彼女に全てを知られる前に、ご自分の立場を弁える方が早いと思いますよ」
「そうね…でも私はここで掴まる訳にも、あの子に全てを教える訳にもいかないわ。それに、」
「?」
シン、と辺りが静まり返る。
「私が今まで何もしていないと思った?私はあなた達のしようとしていることを、約束の日ごと消してみせる」
「はっはっは、よく言ってくれました!いいですか、あなたは今、自分の娘を人質に取られているのがお分かりですか?」
女は苦笑しながら、牢獄に入る男に向かって言った。
「それがなにかしら?私にはあの子の人生なんてこれっぽっちも関係ない。私が見捨てたんだもの、今更私にはどうしようもない」
「そこまで言うのでしたら、今回は交渉決裂です。帰ってよろしいですよ」
「そう」
「では、最後に一つ」
再び辺りは静寂に包まれる。
「サーシャ・カートン。あなたは絶対に逃げられない」
男の言葉に女は微動だにせず、コツコツをヒールを鳴らせ歩いて行く。
「……………さようならキンブリー。もう2度と会わないことを願っているわ」
__キィィィィイ
__バタン!
「逃げられない、か」
いまさら逃げられるなら。
___とっくに逃げてるわよ。
届かない
戻る