私は、母親を探している。
娘の私になんの情報も与えず、ふらりと消えていった母親を。

__コンコン
「失礼しまぁーす…」

理由は、母親に会ってどうしても聞き出さなければならないことがあるからだ。
否、再会したところで私の知りたいことを話してくれる確証などないけれど。

「ロイさぁーん、結果が来たって…」
「ああ、」

私の母は、軍人で国家錬金術師だった。
イシュヴァールの内乱のあと、国家資格を返上して軍や私の前から姿を消した。

「筆記試験、合格だ」
「……え、……いやいやそんなまさ「合格、だ」

私の父親もまた、国家錬金術師だった。
内乱に人間兵器として参戦していた父は、内乱が終わって生きてかえってきた。
のにも関わらず、…父さんは戦後まもなく誰かに殺されてしまった。

「絶対落ちると思ってたのに」
「…落ちると思っていると落ちると言わなかったか」
「うわあああヒューズさんとご飯奢りかけてたのにいい!!」
「……はぁ」

ロイさんと母親…あいつは当時部下と上司の間柄だった。
終戦後身寄りのなくなった私をロイさんのつてでヒューズさんの家で預かることになった。
あまり長い間ではなかったけれど、ヒューズさん一家と暮らした時期は私にとって大切な思い出でであり宝物だ。
そして今でもヒューズさんとは親しいままで、こうして国家試験に落ちたら飯奢ってやるぞ!とつい先日会話をしていたのだが。

「それで、」
「はい?」
「理由は何だ」
「…はい?」
「とぼけるな。筆記試験に合格したら国家錬金術師になる理由を教える、と言っただろう」

ロイさんはそう言って冷たい目で私を射抜いた。

「忘れた、とは言わせんぞ」
「…なんでロイさん怒ってるんですか。忘れたなんて言ってませんよ」
「………なら、早く言いたまえ」

私が、国家錬金術師になりたい理由。
それは…


「父さんの跡を継ぐためです」




理由

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