『不安定な関係』
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四角い部屋の中。
オレンジの光が闇に交じり幻想的な空間を作り出している。
私の背中にはひんやりと冷たささえ感じる壁。
そこに追い詰められている。
――何故こんな事になったのか。
「……あのねゼロス」
「なんでしょう?」
後ろは壁、目の前にはゼロス、左右にはゼロスの腕。
私にはもう何処にも逃げ場がない。
「よく考えて。私は人間、貴方は魔族なのよ?」
そんな二人が何でこんな状況になっているのか…、きっと神様にだって分からない。
「そんなこと、考えなくてもわかってますよ?」
「…なら、この状況はおかしいんじゃないかなぁ?…ね?」
どいて?って可愛く言ってみたものの、ゼロスは笑うだけで全く退かないどころか更に近くなる。
可愛く言ってみた辺り、もの凄く恥ずかしい。
「何がおかしいんですか?」
「だから…!ゼロス魔族じゃない!そんな貴方が一体何してるかわかってるの!?」
「先程から何を当たり前な事を聞くんですか?僕が何をしてるかなんて僕が分からなくてどうするんですか。もちろんyouさんを襲っちゃおうとしてるんですよ」
「だから何でよ!?」
「また当たり前な事を聞くんですね。――…貴女が好きだからに決まってるじゃないですか」
「好きって…、だって!」
「魔族でしょ、ですか?…魔族だったらいけませんか?こんな感情、魔族である僕が持ってはいけませんか?」
「…いけなく…は、ないけど…」
「本来、…無いものなんですが。貴女のせいで抑えようがないんですよ。責任、とってください」
なんて、理不尽な。
そんな責任のとらせかたってないよ。
「………ゼロス」
ねえ、もう我慢しなくていいのかな。
魔族だから人間だからとか関係なく、我慢しなくていいのかな。
見つめたアメジストは、はかなく切なく私を捉えていた。
彼の本気に私が本気で応えたら…
――…言ってしまえばもう戻れない。私に天国に行く権利などなくなって…
だけど、彼がいない天国など私に何の意味があるのだろう。
それならいっそ彼がいる地獄に墜ちたい。
「責任、とってあげる」
壁に張り付いていた背中を浮かせ、ゼロスに抱き着けばフワリと優しく包まれた。
「やっと貴女に触れられた」
頭の上から降ってくる声に、どうしようもなく熱くなる心。
「ずっと…こうしたいと思っていました」
熱が心の中だけじゃ狭くて、目から溢れる。
「僕なりに色々考えたんです。押し殺して貴女に会わない事も思いましたが…無理でした」
どうあっても辛いなら、想いのままに。
愛し合ってはいけない存在。
それはきっと、とてつもない痛みを伴うかもしれない。
それでも。
「大丈夫、一緒なら何も怖くないから」
何も怖くなんてない。
彼を失うこと以外。
「覚悟してくださいね。嫌がろうと貴女を離すつもりはありませんので」
二人の地獄に黒い愛を咲かせよう
END
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(…キス、して欲しい)
(息が出来なくなっても許してくださいね)