言葉に出来ないきもちを
『言葉に出来ない気持ちを。』
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今夜は満月。
窓から覗く星空を眺め、
私は一口、紅茶を飲んだ。

隣に座るゼロスも、
読みかけの本をぱたりと置いて、
月を仰ぐ。

「満月にはさー、不思議な力があるんだって。
こうして月の光を浴びてたら…何かいいことおこらないかな?」
「いいこと…って、例えばなんです?」
「えー…?例えば……元気になったり、美人になったり?」
「youさんは十分お美しいじゃないですか。」
「…またぁ〜。ゼロスの言ってることは信用できないからな。」

そう茶化す私に、少々むっとした様子の彼。

「本当に言ってますよ?ほら、僕嘘吐けませんし。
youさんが何処の馬の骨とも解らない男に連れ去られちゃうんじゃないかと、
僕いつも心配してるんですから。」
「はいはい。だいじょぶ、そんな心配しなくても。」

ひらひらと右手を振って軽く答えると、
其の手をぱし、と掴まれてしまった。
手首に感じる冷やかな感覚。

意表を突かれた出来ごとに、
私の動きは思わず止まってしまう。

そんな私に、にっこり。と笑みを投げかけるゼロス。
ああ…これ、なんか企んでる時の顔だ…。

「僕がいつもどんな気持ちでいるか…youさんは全く
わかっていないようですね。」
「う、うん。」
「…僕が”いいこと”起こして差し上げましょう。」
「…?どういう意味?」
「いいからいいから」
そう言いながら、私を椅子から立ち上がらせる。
状況のつかめない私の目の前は、
ゼロスの手によって塞がれた。

「え?え??何?」
「少しの間、目をつむっててくださいね」
「…う…うん?」

へっ…変なことしないでよね!と軽口をたたき、
ほんの30秒もしない間に。

「youさん、もう目を開けてもいいですよ。」
「……――――っわ…ぁ!!」

恐る恐る目を開けた私の
目の前にあったのは。

「ちょ…っこれ、どうしたの!?」

―――薔薇の大きな大きな花束。

抱えきれない程の…真っ赤な華たち。
視界いっぱいに広がる、美しい花たちを見て。
私は思わず息をのんだ。


「プレゼント、です。youさんに。」
私の足元に膝まずき、
まるでどこかの王子様みたいに
恭しく礼をして見せるゼロス。

「すっ…すごく…綺麗!!」
「ね?”いいこと”起きたでしょう?」
「…っ!う、ん、とっても!」

可愛らしくリボンまで付けられたその花束を受け取り
嬉しさのあまり満面の笑みを浮かべた私を、
眩しそうに見つめるゼロス。

…その笑顔はとっても愛しげな表情で。
私は思わず―――ドキッとする。

「…その花…本気ですからね。」
「…えっ?」

顔を挙げてゼロスの笑みと視線がぶつかった瞬間。
彼は意味深な笑みを残して、虚空へと消え去った。

部屋に残るのは、
―――彼の余韻と、一面の薔薇。


花言葉は――――…
「貴女を愛しています」





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相互記念に送りつけさせて頂きます!
YUI様に、愛と感謝をこめて。 110221




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