私の放った、光とも闇とも区別のつかない光は、
一直線にリューダルへと向かった。
全てを飲み込む、その光。

大丈夫。
意識は有る。制御、できている。と、
自問自答で確認。

頭がガンガンする―――。

「ごめんなさい…リューダル…。これが、私の正義なの…!!」
「うあああああ!!やッ―――やめっ―――――…!!!!!」

やがて
光はリューダルを飲み込み、
ぞっとするような断末魔を生んだ。

嗚呼―――……
――――これで、やっと、終わり…。

彼の最後を見届けて、
…私の意識は、やんわりと。そこで、途切れた。



―――あなたの正義は間違ってない。―――
―――けれど、私の正義も、譲れない。―――



「…ん……」
「カナさん!大丈夫ですか!?」
「…アメリア…さん…みんな――――」

ゆっくりと持ち上げた瞼。
私の視界に眩しい程の太陽と、仲間の顔が飛び込んできた。

私―――生きてる……。

「みんな―…無事でよかった…。…リューダルは…やっぱり…」

みんなの曇った表情で、彼が滅んだのだと悟った。
…当たり前だ。私が……殺したのだ。

「そっか…。」
「後味…悪いよな…。あいつはあいつなりに救おうとしてたんだ。人間を…。」
「でも!私たちの正義だって間違ってないわ!もちろんカナ、あんたもね。」

だからそんな顔してないの!と、リナさんにばしりと背中を叩かれてしまった。

――――そうか。ここで私が自信をなくしてどうするんだ。

「それにしても、お前、いつの間にあんな技を?」
「ああ、あれは―――」
「万が一の時の為に…って、私がカナに教えておいたのよ。
――――まあ…ある種の賭けだったんだけどね。カナの桁外れの力が有れば大丈夫だって信じてたわ。」
ぱちんとウインクを私に飛ばして、リナさんがいたずらっ子のように笑った。

「ま、これで、一件落着だな。」
「…とりあえず、リューダルの件はね。」

ガウリイさんの呑気な声に、リナさんが意味深げに言う。
そして、少し先に佇む人物へと視線を送った。


雲ひとつ見当たらないまっさらな空をバックにして、
新緑の草と花の中に佇むのは―――黒い神官服姿の、ゼロス。

その、空と草と花と風の美しさとは相対する闇色をした彼を見て、
彼はやはり”あちらの世界”のものなのだなあと、何となく再認識する。

「―――ゼロス。」
「いやあ、お見事でした。カナさん。」
「…どうも。」
「これで、リューダルさんが片付きましたねえ。ではそろそろ聞かせていただきましょうか?」

私は小さく頷いた。


――――そう。私には、もうひとつ問題が残っている。
魔族への誘いの――…答えだ。


「―――もう、私の中で答えは出ているの。」
「おや、では聞かせていただきましょうか。」
「待って。少し、場所を変えましょう?ごめん、みんな。少しここで待っててくれる?」

私の言葉に、みんなの表情が少し曇る。

「…大丈夫…なの?」
「うん、大丈夫。一人で戦いを挑もう…なんて無茶な真似しようとしてるわけじゃないから。」
「わかりました!必ず、戻ってきてくださいね!ゼロスさんに何かされそうになったら、大声で呼んでくださいね!」
「大丈夫だって、アメリアさん。すぐ戻ってくるんだから。じゃあ―――みんな…」


また――――後で。


務めてなんでもないように。笑顔で、そう言った。
ゼロスの手が差し伸べれられる。
瞬間移動で別の場所に飛ばしてくれるらしい。

私はその白い手を取った。

ごめんね、みんな。
本当に、ありがとう。

みんなとの旅も、一緒に食べるご飯も、リューダルとの出会いも、
全てが、今の私を作る基となった。

今生きていることが、こんなに幸せなことなのだなんて、
考えたこともなかった。
―――生きていても…楽しいことは勿論、つらいことさえも無かったから。

「お願い、ゼロス。」
「ええ。では行きましょうか。」

私の一大決心とは裏腹に、
ゼロスはいつもと全く変わらない笑顔だ。


みんな、ばいばい。


―――――私には、
みんなのもとに戻ってくる気など…無い。


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