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沈む夕日に照らされ、少年が少女の手を引いて海辺を歩いていく。





『ぅー…っ…ひっく…』

『……………』

『ひっ、く……』

『…あーもう!!泣くんじゃねーよ!!』

『ふぇっ…?』

『何でお前そんなにイジメられるんだよ!!?』

『わかんないよぉ…』

『ったくよ……』





少年はハァ、と息をついて歩みを止めた。
つられるようにして、後ろにいた少女も歩みを止めると、少年は少女に振り返った。





『そんなに泣くなら…』

『……?』

『そんなに泣くなら、ずっと守ってやっから。』

『!…ホントに…?』

『…あぁ、だから泣くな。』

『…約束。』





少女は目尻に涙を残し、はにかんだような笑みを浮かべて小指を差し出した。
唖然としていた少年はムスッとした表情で小指を差し出す。





『約束ね!!』

『分かったっての…ほら、帰るぞ。』

『うん!!』





その日から、少女は泣かなくなった。
少年が守っていたから。





────────
───────






.

「じゅーだいーめっ!!」

「わっ!?って…
紅月?」

「はいっ!!」





放課後、少し早めにクラスが解散した隣のクラスの紅月は終わったのを確認して、後ろから思いっ切りツナに抱きついた。





「紅月!!
テメェ十代目に馴れ馴れしくしてんじゃねぇ!!」

「なーんで隼人にそんな事言われなきゃいけないのかなー?
…あ、十代目の右腕を私に取られちゃうのが嫌だからだね!!☆」

「テメッ…待ちやがれっ!!」

「きゃーっ!!」





毎度のように見る光景に、ツナと後から荷物を纏めて来た山本は苦笑をもらした。






「流石幼なじみって感じだよね。凄く仲が良いし。」

「だなっ!!
っていうかあんなに近くにいて、お互い…っつか紅月は気付いて無いんだから逆にスゲーよな」





そう、二人が言うように獄寺と紅月はイタリアで一時的に屋敷で一緒に住んだことのある程の仲だった。





「まぁ喧嘩する程仲が良いっていうしね」

「ははっ!!
ま、喧嘩仕掛けてんの獄寺が主だけどな」







獄寺が怒りながら彼女を一人帰し、山本が笑ってそれを流し、ツナが宥めながら談笑していた時だった。




ガラッ





「…君達まだ居たの?」

「げっ…雲雀。」

「いつも一緒にいる女子と帰ったと思ったんだけど…。」

「あいつならさっき帰したっての」

「…君達もさっさと帰りなよ。」

「は、はいっ!!」

「っつか何でテメェが居るんだよ!!
言っとくけどまだ下校時間じゃねぇぞ!!」





教室の扉を開けたのは風紀委員長・雲雀だった。
普段は下校時間に見回りしに来る雲雀だったが、今日は普段より1時間近く早い。





「…、…君達知ってると思うけど、最近並盛で暴行事件が目立ってきてるでしょ?」

「あ、はい。」





面倒だ、と言いたげな顔で珍しく雲雀が説明する。





「15分程前に部下がその集団を目撃したらしいから今から咬み殺しに行くんだよ。」

「え?15分程前って…」

「紅月がちょうど帰った時間じゃあ…!?」

「っ…!!」

「あ、獄寺君!!」





ツナの呼び止めも虚しく、獄寺は後ろの扉から飛び出して行った。





「…さっさと帰りなよ。
下校時間じゃないし、今回は咬み殺さないであげる。」

「はいっ!!
行こう山本!!」

「お、おう…」

「それじゃ、さよならー!!」








「……五月蠅い。」





顰めっ面で呟いた雲雀は、学ランを翻してその場を去って行った。





────────
───────





「ネェちゃん可愛いな。」

「俺らとちょっと遊ばねぇか?」





紅月は鞄を両手で抱え、品の無い笑いを浮かべる男の集団から後退る。





「わ…私、用があるので…」

「んな事言わずにさ…なァ?」

「や、やめて下さ…」

「煩ぇ!!黙って言う通りにしな!!」

「痛っ…!!」






男の一人に腕を掴まれ、紅月は顔を歪める。
そのまま強く引っ張られて人気の無い所に引き込まれそうになった時だった。







「紅月っ!!!」

「は…はや、と…?」

「っ!?」






後ろから名前を呼ばれ紅月が振り返ると、そこには肩で息をしている獄寺の姿があった。
獄寺は紅月の表情を見てハッとした。





─紅月の頬に伝う透明な雫。




それだけで獄寺のスイッチを入れるのは容易い事だった。






「テメェらっ…許さねぇ…!!」

「ンだテメェ?
やるってのか!?」






紅月を掴んでいる男が紅月を後方の下っ端らしい奴に渡し、前に出た。





「果てろっ!!」

「なっ!?」





懐からロケットボムを空に放ち一度目は男達の真上、二度目に曲がったボムは急加速して男達に一直線に向かって行く。
男達がボムに気を取られている僅かな時間で獄寺は次の行動に移った。





「紅月!!伏せろ!!」

「っ!!」





言うが早いか、獄寺は男達に突っ込み紅月に覆い被さるようにして地面に伏せた。






ドンドンッ





爆音が鳴り止むと同時に獄寺が顔を上げる。






数人の男は気絶して倒れていたが、やはり伊達にこの辺の暴力団をやっているわけでもないらしく、ボムを食らってもなお起き上がる者が見られた。





「ち…っくしょー…」

「やってくれんじゃねーか…」

「へっ…しぶとい奴らだな。」




紅月と立たせて自分を立ち上がった獄寺は苦笑いを浮かべる。





ヒュンッ…ゴッ…





「ぐあっ!」

「!?」





何処からか飛んできたトンファーに残っている男達の内の一人が直撃して倒れる。





「こんなとこに居たんだ。」

「雲雀っ!!」

「ねぇ、そこに居られると邪魔なんだけど。」

「なっ…!?」





雲雀の言葉に咄嗟に反応した獄寺は反論しようとして、その言葉を飲み込んだ。



──簡単に言うと雲雀はさっさと帰れ、と言っているのだ。



そう思った獄寺は、へっ…、と笑った。






「…勘違いしないでね。
僕は彼らを咬み殺しに来ただけだから。」

「…だよな。
助けたと思った俺が馬鹿だった。」

「分かったならさっさと行きなよ。」





トンファーを構え、雲雀は集団の中へと走って行った。





「行くぞ!」





獄寺は紅月にそう言い返事を待たず手を引いて走り出した。





────────
───────





気付けば、近くの海辺に来ていた。
獄寺が先を歩き、紅月がその後ろを手を引かれながら歩いている。





「……………」

「…クスン…ひっく……」

「……あーもう!!」

「ふぇっ!?」






いきなりキレた獄寺に紅月が驚いた。
獄寺が振り返る。





「いや、その……
約束守ってやれなかったから、もっかい言い直すからな!!」

「え…?」




スゥ…と息を吸い、獄寺が口を開く。




「そんなに泣くなら…」




『そんなに泣くなら…』




あの時と同じ、あの言葉。




「そんなに泣くなら、ずっと守ってやっから。」


『そんなに泣くなら、ずっと守ってやっから。』





紅月が瞠目する。
獄寺は少々頬を赤らめながらもそっぽを向いた。




「お…覚えてた、の…?」

「…まーな。
で、返事は?」







クスッと笑って、紅月は口を開いた。




「!ホントに…?」


『!ホントに…?』


「…あぁ、だから泣くな。」


『…あぁ、だから泣くな。』






昔とそっくりそのままのお互いの言葉に二人は笑った。





「…今度こそ、約束してね。」

「あぁ…。
──一生守ってやっから、ずっと俺の傍に居ろ。」

「え…?」





紅月が目を瞠る。
対する獄寺は先程とは全く違う、夕日を差し引いても真っ赤な顔を紅月に見られたくないのか背を向けてしまった。
それを見た紅月が、ぷっ、と笑って頭を獄寺の背中にコツンと頭を傾けた。
紅月の表情も照れたように赤い。




「笑うなっ」

「うん。
好きだよ、隼人。」

「テメッ
…俺が言おうとした言葉…っ」

「だって隼人が言うの待ったら遅くなるもの…」




図星なのか、獄寺は何も言い返せなかった。




「…帰るぞ。
送ってやるから。」

「うんっ!!」





二人は幼い時のように手を繋いで帰った。
ただ違うのは、恋人繋ぎだったと言う事。









あの時の言葉を、もう一度






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懺悔室→



な…長かった…(゚Д゚;)←


時間とかの問題で獄寺を研究しきれずに自分なりにやってみましたスミマセンorz


何気に雲雀さんが良いとこ取ってっちゃった…←
最初雲雀の妹設定にしようか考えたんですが、もしそうなったら雲雀さんが意地でも一人でヒロインを守りそうなのでやめました←←



獄寺甘、こんな感じでしょうかね…;;



せっかくの相互記念なのに何か違ってたらごめんなさいorzorzorzorz







2010.4.2.

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2020.08.21.移動

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