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「紅月、」

「……何?」

「もう少し、こちらへ…」

「何故?」

「良いから、おいで。」

「……」

「……」

「……」







宿で読書をしていた紅月は風呂から上がってきた薬売りの言葉に顔を上げた。





暫く視線でのやり取りを繰り広げていたが、先に折れたのは薬売りの方だった。
















「…薬売り。」

「何です…?」

「これは?」







紅月が動かないと分かると、薬売りは本から目を離さない紅月の背後に回り後ろから抱き締めていた。
本から目を話さないまま紅月が問いかけると薬売りはさも当然の事だと言わんばかりに、







"充電、ですよ"





と微笑みながら答えた。







「………そうか。」

「えぇ、貴方がいつも…素っ気ないので。」

「関係あるまい。」

「いいえ、少なくとも私が自ら動かなければ…ならんのでね…?」

「……」






薬売りが薬を売る以外にモノノ怪を退治しているのを知っている為、薬売りが疲れているのを知っている紅月は沈黙した。







「………」

「図星…か?」

「…煩い。」







それからはぺら…と紅月のページを捲る音のみが部屋の静寂を壊す。




暫くするとページを捲る音が止み、動く気配も無いので薬売りが寝てしまったのかと小声で声を掛けた。







「紅月?」

「…何だ」

「(起きてたのか…)本、読まないんで?」

「………」

「…紅月?」






一向に反応を見せない紅月にどうしたものかと薬売りが思案していると、紅月の口から何か言葉が紡がれた。







「薬売り、」

「はい…?」






くる、と肩越しに薬売りに振り返り、紅月はボソリと薬売りが聞こえる程度の声で呟いた。








「私はお前が好きだ。」

「!」

「だからこうしてお前と共にいる訳だし、離れるつもりも、無い」






恥らう事無く、ぶっきらぼうに言いのけた紅月はそれだけ言って再び本に視線を戻した。



そこで、薬売りがふと呟く。







「もしかして…言おうかと迷っているうちに本の内容が、入らなくなった…とか?」

「……………」

「紅月」

「煩い言わせるな私は本を読む。」






紅月の不器用な返し方にクスクスと笑った薬売りは抱き締め直して囁いた。







「愛して、います」

「…知っている」

「…お前は?」

「…知っているだろ「紅月、」」







紅月の言葉を中断させ、口を挟んだ薬売りに紅月は苦虫を噛み潰したような表情をした。







「…て、」

「?」

「…愛してる。」






紅月の声がその言葉を紡ぐと薬売りはちらりと見えた。

彼女の耳元が赤くなっているのに。







「…慣れない言葉を、使うからです、よ」

「使わせたのお前であろう?」

「使ったのはお前…ですぜ」

「………」








確かにそうだ、と妙に納得し何も言えなくなった紅月は何処か悔しそうな雰囲気を出して再び本に目を戻そうとした。





が。







「…薬売り、」

「もう…読書は終わり、です」







薬売りがそっと、有無を言わさず本を取り上げた。







「何故?」

「…読書と私、どっちが…お好きで?」

「……」

「………」

「…「答えないなら、このままお前を抱い」ちょっと待て早まるな。」

「…で?」







小さく溜息をついて紅月はか細い声で、しかしはっきりと言葉を薬売りの耳に届けた。









お前に決まっている。





(…私は結局お前に叶わないからな)
(知って、ますよ。)
(…なら聞くな)
((お前が赤くなるのが見たい、なんて言ったら…))
(なんだ、言いたい事があるなら言え。)
((…暫く口を利いては、くれませんね)紅月、)
(?)
(愛しています)
(…ありがとう。)






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→懺悔室









私のクールのイメージって
こんな感じですが…大丈夫でしょうか…?
甘めを目指しましたが果たして甘いのやら…←



薬売りがデレてるのか甚だ疑問かもしれません…orz←
でも薬売りはヒロイン大好きさんです。



キリヤ様、キリ番25500番おめでとうございます!
リクエストありがとうございました!







2013.02.15.→キリ番


2013.02.16.紅月

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