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それは突然。
だが必然だった。







「もっくん?」







あと数時間はかかるだろう街を目指してジープを走らせていた一行。


観世音菩薩の命により異世界から使わされた紫音は相棒の物の怪に落ち着きが無いのを見て首を傾げた。







「──あいつが、」

「あいつ?」

「あいつがこっちに来る。」

「え…?まさか…」






誰の事かすぐに察した紫音は瞠目し、事情を知らない四人に疑心が芽生えた。







「あいつって誰だ?もっくん」

「それは「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」っ!?」






悟空の質問に答えようとした物の怪は突如聞こえた悲鳴に首を巡らせる。
半瞬遅れて五人もそちらを見た。




少し先の方の空から地に引っ張られるように何かが落ちていくのが見える。
一行はそれが人だと理解するのに時間はかからなかった。






「っ、飛ばせ八戒!!」

「分かりました!!」





唸るように物の怪が叫ぶと八戒はジープを飛ばして落ちていく人物の落下地点を目指した。







「ここからはジープでは無理です!!
降りましょう!」

「紅月…っ」

「紅月ちゃん!!」

「おい待てっ…!!紫音!」

「紫音!!」

「チッ…行くぞ!!」






八戒が言うが早いか、ジープから飛び出すように降りた紫音と物の怪は四人の制止も聞かずに森の中へと走っていき、遅れた四人もそのあとを追った。






「っ…近くに妖気が…」

「紅月ちゃん!!何処!?」

「なぁ紫音、その紅月って…、!?」






悟空が言いかけて、風に乗って伝わってきた気に驚愕し言葉を詰まらせた。
紫音と騰蛇以外の三人も同じようだった。





「この神気…」

「っ紅月……!!」






懐かしむような口調で呟いた紫音の横を騰蛇が走り通り過ぎる。






「紫音、」

「紅月ちゃんはね、紅蓮の大事な人で」






三蔵が名を呼ぶと紫音は淡々と、しかし暖かみのある声で喋り出した。







「私の親友で、」






その視線の先は遠ざかる騰蛇の背と、






「私の十三人目の神将なの。」






舞のように刀を振るう紅髪の女性。







「何なの…」

「ヒヒッ、まさかンな所に上玉の神属の女がいるとはな…」






自分を囲む男達からは確かに妖気が感じられるのに、自分の知っている妖怪の姿では無い事に紅月は内心動揺していた。






「しかもこの神気…かなり美味いぞ」

「っ…」

「怖くて声も出ないのか?」






舌舐めずりし品定めするように上から下まで見てくる妖怪達に生理的な気持ち悪さを感じ、顔を真っ青にさせた紅月は左手に愛用の刀を召喚する。







「あたしに触るな…」







あたしはあの子の神将で、
あの人のものだ。






「あたしに触っていいのは、紫音と紅蓮が認めた者だけだ…!」






神気を爆発させ、紅月は握り締めた刀を取り囲む妖怪達へと振るった。
──刹那。







「紅月!!」






慣れた神気に、愛しい低めの声。



声の聞こえた方へ振り向くと同時に、見えたのは紅いざんばらな髪。
そして紅月の頬を灼熱の闘気が掠めた。






「紅月伏せろ!!」

「!!」






素早くしゃがみ込むと、頭上を炎蛇がうねる。
妖怪達へと絡みついた炎蛇は離すまいと暴れる妖怪達を更に締め上げた。






「ぎャぁぁァっ!!」

「何だこりゃあぁぁ!!」

「!!…」






一瞬に冷静になると紅月は前転し刀を構えて炎蛇に苦しみもがく妖怪を叩き斬る。






「ぐぁぁぁっ」

「あ゛ぁあ゛あ゛っ!!」





数人を斬ったあとで、残りの妖怪達が蜘蛛の子のように散り始める。
気配が消えたところで紅月は刀を消し膝をついた。






「紅月!!」

「ぐ、れん…」






騰蛇が駆け寄り、紅月はそこで初めてちゃんと騰蛇の顔を見た。








「紅月、紅月…っ」

「紅蓮…」

「無事か?怪我は…」

「さっき落ちた時掠めたくらいだから、大丈夫…」







紅月の頬を包み、身体をペタペタと触って怪我が無いかと見ながら話す騰蛇に紅月は無事を伝える。






「紅月ちゃん!!」

「紫音っ」






走って飛び付いてきた#紅葉#は受け止めた紅月を見て笑みを向けた。






「久しぶり!!」

「紫音、無事だった…?」

「うん!!紅蓮や皆がいたから大丈夫だったよっ」

「皆…?」






そう呟いて、紅月は紫音の後ろを見ると見知らぬ四人組が#紅葉#を追うように歩み寄ってきた。


瞬間、紅月は呼吸を忘れる程目を見開いた。






「え…?」






見知らぬ四人組の筈。



  ・・・・・
否、知っている。





「捲簾…天、蓬………」





赤い髪と瞳。
優男面に片眼鏡。




「金蝉…?」





紫暗の瞳に輝く金髪。






姿見た目が違えど、その魂を知っている。



古い記憶が紅月の脳を掠めた。



そして、髪型以外唯一変わらない少年。





「ごく「それまでだ、紅月」…観、世…」






いつの間に現れたのか、観世音菩薩がすぐ近くの木に背を預けこちらを見ていた。






「観世…」

「いつか話す。それまで何も語るな紅月。
────金蝉、いや弦奘三蔵。
上司命令だ、紅月も連れていけ。ちなみに拒否権は認めない。」

「なっ…」

「何言ってやがる!!」






頬がひきつった三蔵より先に吠えたのは騰蛇だった。






「何故こいつまで連れてきた!!」

「紅蓮あたしが頼んだのっ
観世に、紫音と紅蓮のいる所に連れていけって!!」

「は!?何で…ってかお前なんで観世音菩薩の事知って…」

「それは…」

「紅月とは昔馴染みだよ、十二神将騰蛇。」






紅月が声を出す前に騰蛇の質問に答えたのは観世音菩薩だった。






「昔馴染み…だと?」

「紅月はお前ら神将より高位の神だ。お前らと会う前の紅月は神界と天界を行き来してるんだぞ。」

「だから、昔から知り合いなの。」





ばつが悪そうにしながら言った紅月は申し訳なさそうに観世を見遣る。






「ごめん、観世。
わざわざ連れてきてもらって」

「構わねーよ。ただ、きっちり働いてくれよ?」

「ん、分かってる」






短く返した紅月に満足気に頷いた観世音菩薩は一行に背を向けたが、それを呼び止めたのは騰蛇だった。





「観世音、すぐ紅月を元の世界に…」

「おいおい、よく考えてみろ。
神将だって他にも男はいるだろ?
お前の目の届く範囲にいた方がいいんじゃねぇの?」






騰蛇に近付き耳元で悪魔のように囁いた観世音は騰蛇の目付きが変わった事に内心笑みを浮かべた。





「三蔵、紅月を連れていけ」

「テメェどっちの味方だ、ぜってぇ嫌。」

「連れていけ」

「断る」

「三蔵…私からも紅月ちゃん連れてってほしいな…?」

「………お前もか…」





#紅葉#が三蔵の袖を掴んでお願いすると、言葉を詰まらせた三蔵は盛大に溜め息をついた。






「決まったみてぇだな…んじゃ、紅月よろしく。
くれぐれも置いていったりするなよ。
紅月と紫音に何かしてみろ、カード止めるからな。」

「てめ、事あるごとにカード盾にしやがって…」

「じゃあな三蔵一行。」






三蔵の言葉を完全に無視した観世音はヒラヒラと手を振って姿を消した。








変化した物の怪の横に八戒がしゃがみ込み、紅月の手をとった。





「怪我、治しますから見せてください。」

「え…で、でも大丈夫だから…」

「僕が治したいんです、見せてくれますね?」

「う…はい…」






八戒に圧され断りきれなくなった紅月はあちらこちらに見え隠れしている掠り傷を見せた。
それを治癒しながら八戒が口を開く。






「僕は猪 八戒と言います。
貴女の名前は?」

「あ…紅月…」

「紅月さんですね、これからよろしくお願いします。」

「い、いえっこちらこそ……」

「紅月ちゃんっていうの?俺は沙 悟浄っての。ヨロシク。」

「俺悟空!!よろしくな紅月!!」







治療されている間次々と自己紹介していく三人に目を丸くさせながら紅月は頷いた。






「それであちらの無愛想な「弦奘三蔵」おや、自分で名乗るなんて珍しいですね。」

「おかしな名前で言われちゃ敵わんからな。」





煙草をくわえ、ふん、と鼻を鳴らして背を向けた三蔵に八戒は苦笑して治療を終えた。






「はい、もう大丈夫ですよ」

「ありがとう」

「何も知らないというのは不便ですし、ジープの中で少しこちらの世界の話をしましょうか。」

「いいの?ありがとう。」

「いえいえ。
では、動けますか?」

「うん」






八戒が立ち上がり少し離れると、立ち上がった紅月の肩にすぐ物の怪が飛び乗った。
それからすぐ紫音が三蔵の隣に並ぶ。






「…紫音…?」

「さっき言ったでしょ、紅月ちゃんはもっくんの…紅蓮の大事な人なの。
私達がこっちに来てから会ってないんだし、少しくらい二人にさせたいんだ。」






私はあとから目一杯紅月ちゃん一人占めするからねっ、と悪戯っぽい笑みを浮かべて紫音は三蔵を見つめた。


ふっ…と笑った三蔵は物の怪と紅月を一瞥し、紫音の手を取る。






「え、三蔵っ!?」

「今日ばかりは邪魔も入らねぇしな」

「うっわ、三蔵は紫音ちゃん一人占めかよ。ごじょさん妬いちゃう。」






空気が読めないのか敢えて読まないのか、悟浄が二人の間に入ろうとする。





ガウンッガウンッ






「蜂の巣にしてやろうか…クソ河童」

「遠慮シマース…」

「馬鹿ですね、悟浄。
今日は保護者がお休みですから、三蔵が一人占めのチャンスを逃すわけないじゃないですか」

「ったく…」






おー怖、と降参のポーズを取る悟浄に苦笑しながら八戒は後ろにいる紅月と騰蛇、悟空を見た。







「三人とも、行きましょうか」

「あ、うん」

「いいか紅月、特に悟浄には気を付けろよ」

「え?なんで?」

「あいつに触ると孕むぞ」

「えっ!?」






驚く紅月に念入りに騰蛇が注意すると会話が聞こえた悟浄が叫ぶ。






「くぉら騰蛇!!無い事言ってんじゃねぇよっ」

「何か間違ってるか」

「全然ちげぇよ!!触っただけで孕むか!!」





ぎゃーぎゃー騒ぐ二人(一人と一匹)に八戒がおやおやと笑うと、紅月から目を離さない悟空に声をかけた。






「悟空?」

「なぁ八戒…俺、紅月と初めて会った気がしねぇんだ。
初めてだけど、昔…会った事あるんじゃねぇかなって思って…」

「…そうですか」






頭上に疑問符を浮かべる悟空を撫でながら、その事に何も言えない八戒はただ、行きましょうか、とだけ言って悟空と歩き出した。



ぎゃーぎゃーと未だに煩い二人に三蔵の銃が火を吹く五秒前の事だった。










ーーーーーーーーーーー
懺悔室





はわわわわっ(゚Д゚;)
こちらの夢主中心に…(゚Д゚;)
相互記念リクだから
ヒカル様宅の夢主中心で
計画していたのに
自分で潰してしまっ…(゚Д゚;;;)←もちつけ





はい、えっと…
ヒカル様ごめんなさい←
仕上がりめっちゃ微妙です←
時空の桜の夢主ちゃん
こんな感じですかね…?
(だいぶ違うかもしれないですすいません;;)





ダメだ文才欲しい_(:3」 ∠)_
ヒカル様、紅月に
その素晴らしき文才を
お分け下さい…ww←




はい、残念な仕上がりですが
書いてて楽しかったですw
よろしければまたリク下さいww





ではヒカル様
相互&リクありがとうございました!!







2012.05.14.紅月
2020.08.21.移動

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