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元親はずるい。
いつもいつも私が嫉妬してばっか。
偶には私の気持ちもわかってよね!!
「やほ、紅月。」
「あ、にーにだ!!」
「……………」
何でコイツが居やがる。
一昨日海から久しぶりに帰ってきた元親は彼女である紅月を抱き締めながら縁側で風に吹かれていると、庭に見覚えのある迷彩が空から降りてきたのを確認した。
知る人のみぞ知る、紅月の兄である猿飛佐助だった。
元親ががっちりと紅月の身体を掴まえていたにも関わらず、やはり血筋なのか素早く抜け出した紅月はパタパタと佐助に駆け寄った。
「紅月、元気だった?」
「いつも元気だよ!!」
「そう、なら良かった。
…あれ?鬼の旦那いたの?」
「最初っから居ただろーが!!
テメェわざとだろ!!」
貼り付けたような笑みを向けてきた佐助に元親が怒鳴る。
「ヤダなぁ、俺様そんな事しないよ。
ね?紅月」
「しないしない」
「紅月どっちの味方だよ!?」
ニッコリと笑い紅月は当たり前のように言った。
「にーにがいる時はにーにの味方なのっ!」
「!」
「…嬉しいこと言ってくれるじゃん」
気が遠退くのを感じた元親などいざ知らず、仲の良い兄妹は日が暮れるまで遊んでいた。
「あ、私お風呂入ってくる!」
「いってらっしゃい、昔みたいに足元滑らないように気をつけなよー?」
「にーに!!
私いつまでも子供じゃないんだよ!?」
軽口を叩きながら部屋を出て行く紅月を見送った佐助は、ずっと縁側に座り続ける元親の横に座った。
「…鬼の旦那ヤキモチ?」
「馬鹿野郎、誰が…」
そこまで言って、元親は口ごもった。
ヤキモチじゃない、と言えば嘘になるが、認めたくないのだ。
元親以外の男、それが例え彼女の兄でさえも元親は紅月の視界に入れさせたくなかった。
それなのに、自分の前で佐助の味方だと言った紅月に衝撃を受けていた。
黙ってそれを聞いた佐助は苦笑しながら口を開いた。
「あの子を手放したくないなら、もっと大事に扱ってやってよ。
紅月、さっき俺様の味方だって言ってたけど、多分天地がひっくり返っても俺は鬼の旦那に敵わないよ」
「……どういう事だ?」
怪訝そうに首を傾げた元親に、佐助は数日前の話を始めた。
「何日か前に紅月の鷹が文を持ってきたんだよね。
まぁ俺様と紅月がたまに文でやり取りしてるのは知ってるでしょ?」
「あ、あぁ…確かそんな事してたな」
思い出して頷きながら納得する元親に佐助は続けた。
「内容がねー…
─寂しい、って」
「"寂しい"…?」
「うん、鬼の旦那の身の回りの事は他の女中がやるし、少し時間が出来たかと思えば既に酒飲んでて楽しんでるし、それ以外は海に行って会えなくなるって。
一緒に居たいのに海に連れてってもらえないって。
そろそろ俺様のところに戻って来ようか考えてるみたいだよ。」
「は…?」
あれか、すれ違いでぎこちない空気が漂う中実家に帰るっていう嫁さんか。
「分かりにくいけどそんな感じでいいと思うよ。
全く…紅月も鬼の旦那もお互い依存しあってるんだったら素直になればいいのに。」
クスクス笑いながら元親を見やる佐助に元親はぶつぶつ悪態をついた。
「んじゃ、俺様そろそろ帰るよ。
有給休暇とはいえ旦那放っておいたら大変だし」
「アイツに一言言わなくていいのか?」
「めっずらしー!
いつもだったら"さっさと帰れ"とか言いそうなのに…ぇ、言っていいの?」
「いや嫌だけど」
「ですよね…
俺様の帰る時機くらい分かってるよ、俺様の妹だもん」
「どういう根拠だ」
「さぁ?
んじゃまた来るよー♪」
「もう来んな猿野郎!」
キリの無いやりとりに苛立ちを覚えた元親は軽々と塀を飛び越えていく佐助に叫ぶように言って、佐助の言葉を思い出していた。
「寂しい、か」
勿論、俺も寂しくないわけではない。
しかし慕ってくれている野郎共や海に囲まれている分それはあまり感じない。
なら紅月は?
アイツは一定の者以外とは関わりを持たない。
俺と出会ってから今までも猿飛と真田と武田のおっさん以外と必要以上に喋っているのは見た事が無かった。
なら、城では?
「まさかずっと…」
「元親?」
髪を吹きながらゆったりとした着流しを着て浴場から戻ってきた紅月は思案に暮れる元親を訝しげに見ながら歩み寄った。
「にーに、やっぱ帰ったんだ。」
「あぁ。
さっきな」
「うっそ、なら長湯しなきゃ良かったなぁ…」
元親に手招きされ、ちょこちょこと元親の懐に潜り込んだ紅月は心地良さそうに夜風にあたりながら喋る事無く自分の濡れた髪を弄くる元親の言葉を待っていた。
「紅月」
「うん?」
「明日、荷を積んで船を出すつもりだ。」
「…そっか」
それはまた暫く会えないという事。
それを理解している紅月の言葉も自然に暗くなった。
「…でな、ものは相談なんだが」
「はい?」
いつもと違う言葉に声が裏返りそうになるも唖然としたように紅月は元親を見上げた。
元親は微笑を浮かべている。
「お前も来ねぇか?」
「え…」
「だから、お前も俺と来ねぇかっつってんだよ」
「ぇ、だって…」
「あーもう、来い。決定な」
「拒否権無いんだ」
「行きたくねぇのかよ?」
半ば強引な言葉の元親にツッコミを返すと元親は苦笑を浮かべながら聞き返した。
「…行きたくないわけない。」
嬉しそうな笑みを浮かべ元親の首に抱き着いた紅月は照れたように耳元に唇を寄せる。
「ありがと、」
「いや、気付いてやれなくて悪ィな。」
「ううん、いい。
…好きだよ、元親」
顔を見られないよう元親の肩に顔を埋めて小さく呟いた。
「わかってらァ。
俺もだからな」
小さく笑った元親は紅月の頭に唇付けた。
ずっと、
(連れてってくれなくて)
(一緒にいてくれなくて)
(寂しかったんだ)
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懺悔室→
引っ越し途中で仕上げました;
結構遅くなってすいません;;
嫉妬甘…つか切甘みたいになったような…;
急いで書くとずれますね;←元々
リクありがとうございます!
2011.06.09.移動
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