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「政宗様、城下に連れて行ってくれませんか?」
いきなり部屋に入って来た政宗の正室の紅月がそう言い出したのがきっかけだった。
「Ah〜…」
連れて行きたいのは山々だが、溜まっていた執務をやるように言われた政宗は近くで黙々と執務をこなす小十郎をちらりと見やった。
「………。」
「…………。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
「……………。」
「………はぁ。」
しばらく無言の会話をしていて先に折れたのは珍しく小十郎だった。
「…夕刻までには戻って来てください。」
「お、おぅ…」
珍しく外出を許した小十郎に若干ビビりつつも、政宗は紅月と一緒に城下へ出かけて行った。
小十郎が紅月と何か話していたが恐らく外出に関する注意事項だろう。
───────
「あっ!藤次郎様あちらはどうでしょう?」
「OK、行くか」
城下に訪れた二人はとある行きつけの呉服屋に入った。
「いらっしゃいませ。
…おぉ‥これはこれは…」
奥から出てきた店の主人は政宗と紅月の姿を見て深々と一礼した。
店の主人と少し他愛ない話をしたあと着物を見ていたら、紅月に
「政宗様、少し待っててくださいね。」
と、笑顔で言われ政宗は店の出入り口で待つ事にした。
しばらくして紅月が包みを持って店から出てくる。
「遅くなりました」
「いや、気にするな。…それは?」
政宗は包みを指差す。
「え?あ…内緒です。」
紅月は悪戯っぽく笑みを浮かべた。
政宗は紅月と手を繋ぎ、再び城下を回っていた。
気付けば夕刻。
「政宗様、そろそろ戻りましょうか。」
「そうだな。」
二人はそのまま城下に帰った。
「あ、筆頭が帰って来たぞ!!」
「筆頭、お帰りなさいませ!!」
ニコニコと兵士達が声をかけていった。
何故か皆いつもより機嫌が良いように見える。
「何かあったのか?」
首を傾げる政宗に紅月はクスクスと小さく笑った。
「どうでしょうね。」
「…?」
政宗がその理由を知るのにそう時間はかからなかった。
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部屋で書物を読んでいた政宗は紅月の声で顔を上げた。
「政宗様…夕餉の支度が整いました。」
「OK、今行く。」
部屋を出て、すぐ後ろに紅月を連れて広間の戸を開けた政宗は上座の上に飾られた大きな掛け軸に唖然とした。
そして一同がそれを読み上げる。
─筆頭、誕生日おめでとう御座います!!─
「What…?」
「この前奥方が「誕生した日って公言してはいけないって言うけど、生まれた日なんだから祝っても良いと思わない?」って言ったんですよ。」
「それもそうだと思った俺らは今日誕生日の筆頭を祝う事になったんですよ!!」
「小十郎様を説得したのも、」
「計画立てたのも奥方ですけどね!!」
最後は強調するように兵士皆が揃って言った。
バッ、と紅月を振り返ると頬を赤くして俯いている。
「その…御迷惑かと思ったのですがっ…!!」
「Thank you…紅月」
ニカッと笑みを向けた政宗に紅月はほっと安堵した。
「今宵は無礼講だ!!騒げ野郎ども!!」
政宗のその上機嫌な一言で、夕餉という名の宴が始まった。
ーーーーーー
ーーーーーーーー
宴のあとは自室に戻り、障子を開け紅月に月見酒を付き合わせていた。
「…政宗様…」
「ん?」
紅月が包みを差し出す。
それは昼間に呉服屋から出てきた時に持っていたものだった。
「え…と、政宗様で言う「ぷれぜんと」…です。」
はにかんだように紅月は笑みを浮かべた。
包みを広げると、蒼の色に背中に竜の刺繍が施された羽織りだった。
「最近よく城下に行って、呉服屋さんに頼んで作り方を教えて貰ってたんです」
「Oh…」
嬉しそうに政宗は刺繍をなぞる。しばらくして紅月に手招きした。
「もう1つ欲しいものがある」
「?
私で用意出来るのなら…」
「お前にしか頼めねぇんだよ」
ちゅっ、と軽いリップ音を立てて紅月に口付けて政宗は耳元で囁く。
「…、……」
「っ!?」
バッと身を引き赤面すると、政宗は無邪気に笑った。
─お前との子供が欲しい
ーーーー懺悔室ーーーー
政宗の誕生日に書き上げようと思って忘れてしまいましたorz
でも史実では8月3日と大抵書いてあるけど9月5日でもあるらしいですよね…
…まぁ遅れた事に変わりないけどもw
遅くなったけど政宗誕生日おめでとう!
2009.9.14.
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