おまえの抜け殻は酷く美しい | ナノ
あの日の試合は結局負けに終わり、私たち三年は流れるように部活を引退していった。あれから部員とは一切会話をしていない。もちろん、影山ともだ。例え廊下ですれ違うことはあっても、目を合わせることはなかった。

それもそうだ。あんな風にコートから外されて、しかも試合は負けてしまったのだから。話し辛い気持ちもわかる。私も、そうだから。

卒業式という今日この日だって、私たちは目を合わせていない。言葉を交わすこともできない。あんなに影山のことを気に掛けていたのに、いざああいった出来事が途端に起こると、なにもできなくなる。そんな自分が情けなかった。でも、そう思うだけで進歩はしなかった。声をかけることすらできなかった。ただすれ違うだけで、始めから知り合いでもなかったかのように。


卒業式といえば、別れ。私と影山のように違う進路の人もいれば同じ高校に進学する人もいるかもしれないが、やはり哀愁の雰囲気に浸りながら仲の良いグループで固まって談笑するのが一般的というもの。それでも影山はこんな日も一人なのだろうか。

「なまえー!写真撮ろー!」

遠くの方で友達が呼んでいる。そちらに向かおうとすれば、ちらりと見知った黒が視界に入った。

「うん、今いくー!」

彼は、ひとりで空を見上げていた。