『瑞希とモブ』
「……」
「……いい天気ですね」
「ん……」
なんだろう。
この居心地のよさ。
楢川はぼんやり空を見上げてる。
僕の頭が肩に乗っかってることなんて気にもとめてないみたいだ。
「皆さん、補習受け始めたそうですね」
「……B6のみんなのこと?」
「はい」
ふと視線が降りてきた。
屋上に吹く風はそろそろ熱気を帯びてくる季節。
夏はもうすぐそこ。
楢川と遭遇する回数もそれなりに増えてきた気がする。
あと、B6のみんなが彼女に話しかけてる姿もよく見かける。
「……斑目君も補習、受けているんでしょう」
「……?」
「……必要、ないのに……」
「え、なに?」
小さな声で紡がれた言葉は僕にまで届かなくて。
少し身体を起こして聞き返したけど「何でもありません」と笑顔で誤魔化されてしまった。
「……ん、じゃあ、」
「?」
微笑みを崩さずに此方を見つめる楢川に、僕も無意識に表情筋が弛む。
これが、つられる、ってことか。
「も、少し、寝る……」
「え」
また彼女に凭れたら、やっぱり何だか、心地がよかった。
触れた肌越しに、笑う気配がした。
(12/8/9)
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