『清春とモブ』









「あぁぁ……また地味な仕掛けに引っかかってしまった……しかも誰もいませんし……、あ」



オレですら忘れかけてた廊下の仕掛けに引っかかってるアホな女がいると思ったら、楢川だった。



「おめェ……バッカなんじゃね?」

「真顔で言われるとしにたくなりますからやめてください」



ネバネバに纏われて動きが取れずにいる楢川を見てたら、不意に面白いことを思いつく。
コイツは地味なせいであんまりターゲットにしたことがなかったからな。



「で、どうやってそっから動くつもりだァ?」

「……仙道君の仕掛けなら……しばらくしたら解放されるでしょう?もしされなくても、夕方になれば巡回の先生もいらっしゃいますし」

「ククッ、そりゃワカンネーぜ?」



嫌味ったらしく見下ろしてやってんのに、コイツときたら表情を特に変えない。
面白くねぇな。



「ま、泣きながら「助けてください清春サマ」っつったらー?助けてやらなくもねーけどなナァ」

「えぇ……女子に泣かれるの嫌じゃないですか?」

「あ?ンだよ、ごちゃごちゃうっせぇ」

「ひぃぇぇ……っ!なにすんですか!意味が分かりません!!」



水鉄砲を発射したら初めて楢川からまともなリアクションが起こった。
顔に直撃した水を勢いよく拭ってオレを睨み付けてくる。

コイツ、こんな表情もできたのか。



「……つーか、オマエもうちょっと色気ある声でねぇのかよ。妖怪みてーな声だしてんなっつーの」

「妖怪、て……ぶふぉぁ!」

「ヒャハハッ!ひっでぇ顔だなァ!!」

「……ちょ、仙ど、く、ん!ストップ!……水ストップ!!」



結局、その後オバケが通りかかるまで水鉄砲でイビり続けた楢川が去り際に吐いた一言は、オレサマを喜ばせたなんて。

たぶんアイツは気づいてねんダローな。



「覚えといてくださいよ!この怨み晴らさでおくべきか……!!」



アホだけど、おもしれェ女。

これでしばらくは退屈しないで済むんじゃね?










(12/8/5)



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