『翼とモブ』






俺のクラスには変な女が二人いる。

一人はクラス担任。
そして、もう一人は。





「真壁君、そこ、漢字違いますけど」

「……!これは……っ、楢川が気づくかわざと間違えたんだ!」

「あ、そうだったんですか」



じゃあ気づいてよかったと笑う楢川はやはり変な女だ。
俺が何を言っても怒らない。
これはまぁ、当然といえば当然だな。

だが、逆もない。

何かを与えても他の奴等みたいに喜ばない。
いつもヘラヘラしている癖に。

そして俺に当然のように仕事をさせる。
今だって、日直だからと放課後呼び止められた。
俺はバカサイユに向かうところだったというのに。



「それを書き終えたら帰れますから、頑張ってください」

「……Shit!なぜ俺がこんなことをしなければならないんだ……!」

「汚い単語使わないでくださいよ。……さっきも言いましたけど日直なんです、今日の出来事書くだけですよ」



少しだけ、楢川が隣の席から此方に身を寄せてくる。

フワリと優しい香りが鼻を擽る。
顔を上げれば、すぐ横に彼女がいた。



「……っ」

「そういえば……今日は一日、教室にいましたね、真壁君」

「なっ、なぜ知っている?!」

「……いや私、同じクラスですよ。……、それに」



視線が、ぶつかる。



「真壁君みたいにキラキラした人、いたらすぐ視界に入っちゃいますから」



だから、いないとすぐ分かるんです。



そう言って、楢川が笑った。
さっきよりもその笑顔が柔らかく感じたのは、気のせいだろうか。



無意識に速まる鼓動の意味を、俺はまだ知らない。










(12/8/4)


[ 69/189 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -