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第十五話「揺心」




顔に残る熱を感じながらも改めて各々を見渡せば、タクトが明らかに険しい表情をしていることに気がついた。

視線がゆっくりとヨウスケの方へ動く。



「………ヨウスケ、なぜよりによってベッドに隠れる選択をした?」

「一番近かったからだ」



ヨウスケはいつもどおりの調子で答える。
さっきあったことに動揺したままなのは、私だけらしい。

思わず視線を落としたところで、タクトの厳しい口調が耳に届いた。



「しかもユラと一緒にあんな狭い場所に入るなんて、どういった了見だ?!」

「……いや、近くにいたから」

「はぁっ?ヨウスケっ、おまえ、どさくさに紛れてユラをベッドに引きずり込んだのか?!」

「ちょ、ユウジ!変な言い方やめてよ……!」



すっかり教官ポジションておかしいでしょ。
貴方達の教官は無事だからいいでしょ。



「なんでユラ、顔赤くしてんの?まさかヨウスケに何かされたんじゃねーだろな」

「ヒジリ君もっ、変なこと言わない!……というか、アキラさんは?」

「あれ……?そういえば、カズキもいないね」



ふと気づいたままに発言したら、ヒロも不思議そうに辺りを見渡す。
カズキ、という名前に、ある場所へと視線が向かう。



「……まさか……」



私の視線を追ったらしいタクトが、ワナワナと震えながらクローゼットの扉を開いた。



「……これは、また……なんとも気持ち良さそうに寝てるね……」

「君たちは……揃いも揃って、人の部屋を仮眠室か何かと勘違いしているんじゃないか?」



クローゼットの中でまるで猫みたいに寄り添って眠ってしまっているアキラさんとカズキを見て、タクトは深いため息をついた。










(12/8/6)


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