願い事ひとつ





「やっべぇな。雨だよバーロォ」

「なんでそんな男前な口調なワケ?」

「うん。気分」



ヒジリが後ろからもたれてきたから軽やかに交わしてやった。

ただでさえ折角の七夕が雨になってテンション下がってんのに無駄に構うんじゃねーよ。



「へぇ……意外。ユラチャンは織姫彦星の一年に一度の会瀬とやらを楽しみにしちゃってる乙女だったんだ?」

「乙女だけれどもが?何か?」



棘のある言葉には棘を混じえて返す。
コレ、私のモットーだ。

つか一々失礼だよね、コイツ。



「そんな夜空の星なんて見なくても、俺が満天の星空……見せてやんよ。ベッドの上でな」

「……ヒジリ。ブッ殺」

「照れんなって〜、天の川も顔負けの昇天を味合わせてやるぜ?」



ほんとに、情緒もクソもない。



「……はぁ…せめて天気がよければなぁ……」



ヒジリの戯言くらい聞き流せただろうに。

灰色の空からは、継続的に小雨が降り続いている。
止む気配はない。



「これじゃぁ願い事も叶わないわ……」

「星に願いをとか……!まじ乙女な!」

「いい加減キレてもいいかな」



振り返れば、悪戯っぽく笑うヒジリ。

全く、打っても響かないというかうにょうにょ交わして、まるで海月だわ。



「違うか。ヒジリは黒糖バナナだっけ」

「おま……!それ、ヨウスケに刷り込まれた知識だろ!確実にそうだろ!!」



あ。ヒジリに突っ込まれた。

笑いを堪えて謝れば、少しだけ不貞腐れた表情で私を抱き寄せる。



「そんなん言うユラには、お仕置きが必要かね」

「えぇぇ?七夕なのに」

「おぅ。じゃ、俺に願い事を言いなさい」

「へ?」



ちゅ、と額に軽くキスを落とされる。



「ユラの願いは……全部俺が、叶えてやっから」



こういうトコロが、彼を好きな所以だ。



「今夜は、俺がユラの短冊代わりになってやんよ」







星に願いをかけられそうない夜は。

そう、貴方に願いを。










――――――――――
TANABATA GIG…終了しました
(12/7/7)


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