虹色スコープ
「……ユラ、画面が…濡れてる」
私の携帯画面を見て、残念そうにヨウスケが呟いた。
今のいままで彼の存在に気づかなくて、少し驚く。
「というか…風邪ひくぞ」
そっと頭にタオルを掛けられて、小雨の中を何時間かボーッしていたことを思い出した。
心なしか、体が冷たい。
「ありがとー」
「何してたんだ?」
「うん。見てみて」
端から見たらただのアホみたいな行動でも、ヨウスケは何も聞かずに馬鹿にしたりしない。
必ず理由を聞いて、受容してくれる。
覗き込んでくるヨウスケに雨粒に濡れた携帯画面を見せると、一瞬驚いた表情をしたあと、予想してた通り優しく微笑んでくれた。
「雨粒が……虹色に煌めいてるでしょ?それを見てたの」
「……あぁ……綺麗だな」
「……うん」
「でも余り長く雨に当たるのはよくない。戻ろう」
「うん」
あったかい手に引かれてLAGへと戻る途中、雨があがった。
空には、七色の虹。
「……空にもでたね、虹」
「ほんとだ」
「明日は晴れるかなぁ」
「ああ、きっとな」
一人でみた虹色は何となく寂しかったのに、二人でみるとこんなにも暖かいね。
握った手に、少しだけ力を込めた。
――――――――――
ひたすらほのぼの。
(12/7/7)
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