君に捧ぐ愛歌




「ユラ、いつまでそうしているつもりだ?」

「星が空を覆うまで……とか?」

「馬鹿を言うな…!今日は夜通し雨だ!!」



タクトの言うことは分かってはいるんだけどなー。

諦めきれないんだよね。
天の川を挟む二星が、一つになるのを見たいんだよ。



一年に一度の七夕は、大抵の確率で雨だ。

そして、今年も例に漏れず。



「何とかならないかなぁ」

「自然の事象なんだ。なるわけないだろう」

「朝からてるてる坊主も吊るしたんだけどなー」

「……大変言い難いんだが、君の吊るした白いヤツは……その、逆さまになっていたぞ」

「えーっ!!なんで教えてくれなかったの?!!」



衝撃の事実に、思わずタクトに詰め寄る。

彼は困った様子を隠しもせず、一歩身を引いた。



「タクトの鬼畜……」

「なっ、何故白いのを放置しただけで鬼畜呼ばわりされなければならないんだ……!」

「だってそれじゃただの首吊り坊主だよ……」



あれ、ヨウスケと一緒にタクトに似せて作ったのがまずかったのかな。

首が垂れきっているてるてる坊主を想像して切なくなる。
思わずため息を溢せば、まだ困った顔をしたタクトと視線がぶつかった。



「ところでタクトは何してんの?」

「……!!いや、その、ぼ、僕は別に……!」

「??」



挙動不審。
正にいまの彼を表すに相応しい四字熟語だと思う。

少し顔を隠すように横を向いたタクトから、予想外の言葉が紡がれた。



「今日が雨になると分かっていて、ユラが残念がるだろうとプラネタリウムセットを購入して夜に一緒に見ようだなんて思ってもいなかったからな……!!」

「……は?」



つまり。

それは。



「……ま、まぁ、もし、ユラが嫌じゃないなら……」

「タクトの部屋で、星……見れるの?」

「……あ、あぁ……吝かではないが」



自然と、口角が上がる。

たぶん、今の私は満面の笑顔だろう。

タクトの優しさと不器用さが、愛おしい。



「……ありがと、タクト!だいすき!!」

「!!!」





空にはフラれちゃったけど。



貴方と一緒に、星を見上げよう。










――――――――――
夜の部まであと1.5hです。
(12/7/7)



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