七夕の夜に




「ヨウスケー、曇りだよー」

「……、残念だったな、ユラ」



浜辺から空を見上げても、星はひとつも見えない。
どんより、うっすい灰色雲が辺りを覆ってるから。

折角の七夕なのに。



「織姫と彦星は今年も逢えませんでしたとさ……」

「身も蓋もないな」

「だってこの天気じゃ天の川も渡れないよー」



前後不覚だよ。

そう憂鬱な気分のまま呟けば、ヨウスケが私の頭をわしゃわしゃと撫でた。



「その……そこは、彦星の愛で何とか渡るんじゃないか?……川の一つや二つ」

「まじでか」



振り返れば、困った表情で首を傾げる彼の姿。

落ち込んでる私を励まそうと、一生懸命になってくれてるのが伝わってくる。

だから、いつまでもこんなんじゃ悪いよね。



「そっか、そうだね……彦星がヨウスケみたいな人だったらいいのになぁ」

「……俺が、彦星……?」

「うん。きっと、優しくて、強い彦星さまだね」

「……。もし、俺が彦星なら、一年を待たずに織姫に会いに行くよ」

「……え?」



不意に見つめたブルーの瞳は、幾千の星を讃えたように綺羅めいて。
一瞬で私を魅力する。



「反対の岸にいる織姫を奪って、どこか、二人が幸せになれるところへ連れ去る」

「……っ」



そっと体を包み込まれる安心感。



「まぁ……俺の織姫は、こうして近くにいるから、心配ないけどな」



そう言うと、ヨウスケはフッと微笑んだ。





私の彦星は、いつでも傍に。










――――――――――
srxイベント当日ですFOOOOOO!!
(12/7/7)

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