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第十話「思惑」




秘密を抱えたヒジリ君と。
ココでは虚の存在の私。

その後、何となく馬が合ってたり。

チャラく見えて実は人付き合いが苦手らしい彼は、I'sの皆とも未だに距離を置いている。

いずれ欠かせないツッコミに変貌を遂げることは分かってはいつつも、何となく一人きりでいるヒジリ君を無視できなかった。





「……どーも」

「おー、ユラじゃん。どしたよ?」

「歌が、聴こえたから」



暇さえあればいつも私が向かう浜辺に、彼はいた。

優しい歌声が、波風に乗って響き渡る。
バラードの似合う声音だと、感心しながら、そっと隣に座った。



「まだ馴染めない?」

「……え、なに?心配とかしてくれちゃってる系?」

「……。心配とかしちゃってる系ですけど何か」

「やーさしーのな、ユラチャンは」



小馬鹿にされたような気がして、じとりと鋭い視線を向ければ苦笑が返ってくる。

いつも彼はこうやって人と自分の感情をはぐらかしてく。
そうしてなるべく誰も傷を負わないように、負ったとしても、浅く済むようにしているんだと思う。

だけど。



「寂しいんじゃないの」

「……っ、」



ホントは。

人間、独りぼっちになんて、慣れやしない。



事情こそ違えど、私自身がそうだから。



顔を上げるといつの間にか、優しい瞳が此方を見つめていた。



「寂しくないよ?アンタが、こうして傍にいてくれるから」

「……!」

「でもま、あんまし女のコに心配かけんのもアレだし……ちょっくら仲良くなってくんわ」

「……は?ぇ、えぇ……!だ、大丈夫なの!?」



勢いつけて立ち上がったヒジリ君の発言に、思わず尋ねれば「んーたぶんダイジョブっしょ」と気楽な返答。



「もしダメだったら慰めて?」



爽やかにウィンクを飛ばして、LAGの方へと歩き出すから。

その後ろ姿に、ため息ひとつ。



「慰めてやらないからがんばって!」





ヒラリ、と褐色の掌が揺れた。










(12/07/04)


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