Callme




「ユラーっ!」

「うわぁ……」



向こうから駆けてくるムカつくくらい綺麗な顔した男に、思わず顔をしかめた。



「ここにいたのか」

「…はぁ……」

「ユラ、その、今日も綺麗だな……」



それはそれは美しい顔立ちにきめ細かな白い肌、艶やかな黒髪。
銀灰色の透き通った瞳。
少しはにかんだ、でも爽やかな微笑み。

まるで童話から抜け出た王子様のような彼は、このホグワーツでは知る人ぞ知る有名人。

シリウス・ブラック。

純血を重んじるブラック家嫡男にして、それに相反するグリフィンドール寮に選ばれた人。
そんな彼は、どこで気違ったのか。
平々凡々を絵に描いたような私に、毎日のように会いに来ていた。



「……綺麗っていうのは貴方のような人のことを言うんだよ、ブラック」

「は?なに言ってんだ、男が綺麗とか……つーかいい加減ファミリーネームで呼ぶのやめねぇ?」

「……」



一体彼の中でどんな突然変異が起こったかは知りもしないが、とりあえずファンクラブが怖いのであまり関わりたくないのが正直なトコロ。
だが彼にしてみれば、知ったことではないのだろう。
周りに注目されるのに慣れきっている人だから。



「シリウスって呼んだら会いに来るの控えてもらえる?」

「……!!え、ぁ…い、いま……!」

「??」

「……!心の準備、してなかった、から……!」



え。

なに。

なにそれ。

学校一のイケメンはどこへいったの?



「なん、で……そんな照れてるの」



つい口を出た言葉に、更に彼が紅潮するのが分かった。

だって、まさか、まさかだよ。



「……ユラに……好きなコにファーストネームで呼ばれたら照れるに決まってんだろ」



彼の口から、そんな言葉が出るなんて。

こっちまで恥ずかしくなって、とっさに顔をそらしたけど。
ブラックの強い視線からは逃れられそうになかった。

此方へと近寄った彼が、耳元でそっと囁く。



「なぁ、………もっかい呼んで?」





羞恥に耐えられず、結局彼の言いなりになってしまうのは、決して好きとかそんなんじゃないと主張したいのです。










――――――――――
いつもシリウスのキャラが迷走する……
(12/06/30)

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