いただきます。


(青の季節、同ヒロイン)





「ユラ。ちょうどよかった」

「どうしたの?」



廊下を歩いていたら、調理室から出てきたヨウスケに呼び止められた。

相変わらずエプロン姿が板についている。



「ちょっと来てくれ」

「え、なに」



線が細い割りに意外としっかりした手が、私の手首をとる。

一瞬だけ驚いたように目を見開いたヨウスケはすぐに不機嫌な表情を浮かべた。



「……ユラ、三食欠かさず食べてるか?」

「は?食べてるよ。主にヨウスケが作ったご飯食べてるじゃん」



今日はおやつのサーターアンダギーも美味しく頂いたよ。

今さら何を。
と首を傾げてたら、何故かヨウスケも同じアクションを取っている。



「三食おやつ付きで……何で肉がつかないんだ……もっとボリュームを……」



何かブツブツ呟いてるけど、スルーしておく。



「それで、結局なんの用?」

「…あぁ、ちょうど新作料理が出来たから、一番にユラに味見してもおうと思って」



顔を上げた後に柔らかく微笑むから、つい恥ずかしくなって頷くふりで視線を落とした。

促され調理室に入れば、食欲をそそる香りが漂ってくる。



「ここに座ってくれ」

「ありがと……、うわぁ……!なにこれ可愛い!」



テーブルの上に、彩り豊かなビシソワーズが皿に盛り付けられ置かれている。
その中でも目を惹くのがなんか星形とか花形に可愛く切られた野菜たち。

何なんだ。
この女子高生クオリティ。



「食べていいの?」

「ああ。出来れば感想を頼む」

「……では、遠慮なくいただきます」



パクリと口に含むと、優しい味が広がる。



「……おいしい!!」

「薄くないか?」

「ううん、丁度いいよ!……ん〜っ、おいしい〜」

「そうか、ならよかった」



フッと微笑んで、しばらく私が食べるのを見つめていたヨウスケが、不意に此方に近づいた。

不思議に思って口に運びかけていたスプーンを止めた瞬間。

そのままその止めた手が引き寄せられる。



「……〜っ!」

「ん、……確かに丁度いいな」

「ヨ、ヨ、ヨウスケ……!!」





私がさっきまで使ってたスプーンを迷わず口に入れやがりました。

思わず大きい声を上げた私に、キョトンとした表情を浮かべた後。
彼はなんてことはない顔でこう宣った。





一口くらい、いいだろ?





そういう問題じゃない。






(12/5/9)



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