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第九話「新参」
「……アンタ、変だわ」
初対面の人に「変」呼ばわりされる日が来ようとは。
ゼクスがやって来た。
第六のライダー、無月ヒジリ。
彼の過去を何となく知ってしまっている私としては、正直関わりにくい相手。
そう思ってしばらく避けていたんだけど、ある日バッタリ廊下でぶつかってしまった。
それこそ、漫画みたいに。
「おぉっと、わりぃ。大丈夫か?」
「……っ」
軽く体を支えられ、咄嗟に顔を見てしまう。
至近距離で見つめあってしまい気まずい。
たぶん私が一方的に気まずい。
「……?もしかして…」
「あ、すみませ……、っ」
慌てて離れようとするけど腰を引き寄せられてしまった。
褐色の肌が、眼前に迫る。
「……ユラ?」
「……は、い?」
「……、やっぱり」
綺麗な顔が少しだけ歪んだ。
彼に対して特別悪いコトはしてないはずなのに、なんだろう。
この罪悪感。
戸惑って見返すばかりの私にハッとしたように距離を取ると、ヒジリ君は仮面みたいな笑いを創った。
「いやぁ、アキラからアイツらのマネージャーがいるって聞いてたけど…かわいーのな、アンタ」
髪に軽く触れてくる彼の手は優しい。
だけど。
「……私のこと、違和感だと思ってる?」
「……っ、……へぇ…ただのかわいこチャンじゃないってワケね」
視線の意図を、直ぐに感じ取ってしまった。
口をついて出た言葉に返ってくる笑み。
こっちが、多分彼の本当の笑顔だ。
無意識に、そう感じた。
「アンタ、いつからLAG(ココ)にいる?……何が目的?」
「……ここに来たのは春頃。目的があって、きた、というか……」
(連れて来られた……の方が正しいのだろうけど……)
それを伝えた所で、彼は納得しないだろう。
「私は……物語を、壊しにきたの」
僅かに驚いた表情をしたあと、彼はさっきよりも幾分か柔らかく、笑った。
「……アンタ、変だわ」
少しだけ、秘密の共有を。
(12/5/6)
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