オーバーライン




LAGの中にいると、嫌でも目に入ってくる。



「やっべ!今のコ見た?超かわいーわ」

「あの犬のことか?」

「いやいやいや、ヨウスケ…人間見ようぜ、人間。つか女の子な。とりあえず俺、声掛けてくるわ」



ヒジリが女の子に声かけてる姿。


別に付き合ってるわけじゃないし、ただの知り合いだから、私が彼の行動をどうこう言う権利はない。

ただ、単純に不愉快なだけ。



「……、ユラ。眉間」

「っヨウスケ…」



考え込んでたから、目の前にヨウスケが来てたことにも気づかなかった。

急に眉間に当たった人差し指に、驚いて彼を見上げる。
相変わらず、考えが読めない表情。



「…おまえ、」

「な、なに?」



コバルト色の綺麗な瞳に見つめらると、なにもかも見透かされたような気持ちになる。

その視線に集中していたら、不意に頭を撫でられた。
あったかくて、大きなヨウスケの手が、私は大好きだ。

的確に胸キュンポイントをついてくる彼にうまく言葉が出てこない。



「ユラ」



もう一度、名前を呼ばれる。

いつだって、ヨウスケは優しい。
だから、ダメとわかっているのに、甘えたくなるんだ。



「……おい!」

「……っ?」



不意に私の髪に触れていた手が離れていく。
咄嗟に顔を上げると、そこにはさっき女の子を追っていったはずの、ヒジリの姿。

呆気にとられる私とは対照的に、ヨウスケは落ち着いた表情のままヒジリと向き合った。



「…どうした?」

「どーしたもこーしたも……なにしてんのオマエら」

「話してる」

「……ただ話すだけで、ンな近づく必要なくね?」



何故かヒジリが不機嫌に見えて、私は口を開かずに二人のやりとりを傍観していた。



「いつもこの距離だ。近いのか?」

「…っいつもかよ、…端から見たらヨウスケがユラを抱きしめてる様に見えるっつーの」

「そうなのか。でも俺達は話してただけだ」

「…ヨウスケ…」



うん。天然にも程がある。

私ですらヒジリの言わんとするところが理解できたのに、ヨウスケはどこ吹く風だ。



「とーにかくっ、あんまユラに近づき過ぎんの禁止!」

「意味がわからないぞ、ヒジリ」



ぐっと、腕を引かれてと思ったら。

次の瞬間にはヒジリに抱き締められていて。



「……コイツは俺のなの」





好きって言われた訳でもないのに。



彼のそんな一言で、さっきまでの不満なんかが一気に消えてく。

つまり。

だから。

きっと。



私は、ヒジリのことが。





「大切なら、ちゃんと捕まえておけよ」



「「……っ!」」



固まる私達に薄く笑って、ヨウスケはそのまま立ち去っていった。



「…あー……とりあえず、ユラ?」

「な、なに?」



「あんま他の男と馴れ馴れしくすんなよ。……でないと妬いちゃうよ、俺」





二人の距離が零になるまで、もう間もなく。






ヨウスケが、意外と気遣いさんだった件。










(12/5/1)


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