07
第七話「砕散」
「…っ……」
理解してたはずだった。
彼らを導くのは、“彼女”の役目だと。
なのに、なぜか。
「ユラ」
不覚にも視界が滲みそうになって唇を強く噛んだ瞬間。
名前を呼ばれ、繋がっていたままの手を強く引かれた。
「ヨウスケ…?」
背中に回された手は、身動きが取れないほどに力の籠っていて。
戸惑いを隠せない。
ヨウスケはいつだって、包み込むように、守るように私を抱きしめてくれていたから。
「タクトは、ユラを守る自信がないのか」
「違う!ただ、僕は……曝される危険を最小限に抑えた方がいいと……!」
「それで……ユラの心が傷つくくらいなら、俺がこの身に代えても守るから……傍にいてほしい」
「……っ…」
優しくて、強い声。
二人ともが私を守ろうとしてくれているコトがわかって、何だか力が抜ける。
「……、ユラ?」
「ユラ、どうした?」
彼らのため、って言いながら。
ただ、逃げていたのかもしれない。
「……っごめん、タクト」
私はもう関わってしまった。
彼らの優しさを知ってしまった。
青と赤の世界に紛れ込んでしまった。
そのことに、気づいてしまった。
だから。
「もう少し、傍に、いさせてほしい……っ」
彼らが、いなくなってしまわないよう……方法を考えなければならないんだ。
アキラさん任せなんかじゃなく、私に、私自身に出来ることを。
(12/4/14)
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