05
第五話「束縛」
「……っユラ!」
「う、わっ……ビックリしたぁ……どうしたのヨウスケ?」
「“どうした”は俺の台詞だ」
甘粕君の手伝いをして図書室から書類を運んでると、突然腕を引かれて強制的に足を止めさせられた。
少し恐い顔をしたヨウスケに、やっぱり彼にはバレたかと内心舌を巻く。
「最近俺たちを避ける理由はなんだ」
躊躇いのない問いかけに私も迷わず笑みを返すと、握られた手に僅かに力が籠った。
「ヨウスケが言ってるのはあくまでも結果論。私に皆を避ける理由はないし、意識して避けてる訳じゃないもの」
「納得できない」
即答されるとは。
感情的になったヨウスケは、結構厄介だ。
巧く繕った言葉とかが、全部意味を成さなくなるから。
「……よく考えてよ、ヨウスケ。私がいなくても……貴方たちの世界は、廻るの」
蒼い瞳は、まっすぐに私を見つめている。
(私がいなくても、物語は紡がれていくんだよ)
「でも、」
「……ぇ」
小さく呟いた言葉に、落ち掛けていた視線が上がる。
吸い込まれてしまいそうなくらい、美しくて、深い蒼色に私の姿が映り込んだ。
「でも、俺の世界にはもう、ユラが必要だ」
「……っ!」
「だから、傍にいてくれないか」
優しい言葉の束縛は、私を強くこの世界へと縛りつける。
(12/2/7)
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