01


赤が呼ぶの。

全て脱ぎ棄てて。
全て曝け出して。
全て貴方に委ねて。

青が制すの。

正しき秩序をもって。
正しき理性を保って。
正しき愛を支えにして。



ぜんぶ交ざり合って
ぐちゃぐちゃに
融けてしまうくらい
愛しあえたらいいのにね。





『少女と君と僕ら』





第一話「世界」



眩しい光に目を細めれば、優しい波音が耳を掠める。

私はいま、リュウキュウの海辺にいる。

此方の世界へ来たのはもう二ヶ月程前の話。



「二ヶ月、かぁ……」



SRXという名の“彼ら”が存在するこの世界に、私は突然迷い込んだ。

だけど、彼らは異端である私の存在を疑問視することもなく。
さも当然のように受け入れてくれた。
元より、ここに私が在ったかのような錯覚。

だから私は、あくまでも知らぬフリで過ごすことに決めたのだ。

そして、もうすぐ彼女のやってくる夏が来ようとしている。

物語の鍵をもつ、彼女が……。



「ユラ」

「…っ、ヨウスケ…?」



後ろから不意に抱き締められて、慌てて振り返る。
少し悪戯っぽくヨウスケが此方を覗き込んでくるものだから、私は思わず砂浜に視線を落とした。

こういうスキンシップには未だに慣れない。
というか慣れてはいけない気がしなくもない。



「……どうしたの?」

「いや……別に用があった訳じゃない。訓練が終わったときユラがいなかったから、此処にいるかなと思って」

「あ…、ごめん……」

「気にするな。俺が会いたかったから会いに来ただけだ」

「……〜っ!」



ヨウスケは不意打ちで爆弾を投下してくるからほんと恐ろしい。

本人は無意識らしいから余計厄介だ。

耳元でとんでも発言を繰り返されたら不味いと、私は急いで彼の腕から逃れる。



「……あ〜…っ」

「……ユラ?」

「あ、あの……っみ、皆は?」



心底不思議そうな顔をされるから不思議だよ。
天然ってこわいな。



ヨウスケは首を傾げつつ、思い出す様に空を仰いだ。
硝子細工のような蒼の瞳が陽光を受けて煌めく。



「タクトならまだ訓練室にいたが……他の奴らは俺が出るときにはいなかったから、それぞれ好きな所に移動したんじゃないか?」

「そっか。……タクトがぼっちになってたら可哀想だし……合流しにいこうか」

「ユラがそうしたいなら」



優しく微笑まれると、くすぐったい気持ちになる。

今はまるで兄のように私を見守ってくれてるけど、“彼女”が来たらこの生温い環境も終わってしまうんだろう。



どうか、それまでは。



貴方の優しさに浸らせていて。





砂浜を手を引かれて歩きながら、私はそんなコトを思った。










(12/1/20)


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