6、知らぬ間に





「不自然な所はない」

「うんユラ、すごく可愛い」

「ありがとう。ロア……じゃぁ、行ってくる」



俺は一つ頷いて、スリザリン寮を後にした。












「……っユラ……?」

「ブラック。……今日は…よろしく」

「あ、あぁ……」


大広間で待ち合わせた俺達。
なぜか俺の見て、ブラックは一瞬口籠った。

何だ、やはりどこかおかしい所があったのだろうか。

もう一度自分の姿を確認しても、それらしい所は分からなかったので、俺はブラックの視線を無視した。



今日はホグズミード行きの日だ。


浮き足立つ生徒に紛れ、俺は完全に臨戦態勢でこの場に挑んでいた。


隙を見せずに、あくまでも自然な流れでブラックから好みの女像なんかを聞き出す。
それが今日の俺に課せられたミッションだ。

他の女子のように、使い捨てにされては堪らない。

というか。
させるわけにはいかない。

この体は、俺にとってはまだまだ未知数で、ある種神聖なものだから。


「……あの、」


俺が考えに没頭していると、不意にブラックが口を開いた。
目を合わせようとしたら自然と目の前に立つ彼を見上げる形になる。

元々男だったときから俺の方が小柄だったけど、こうもあからさまに見下ろされると気分が悪い。


挑戦的な姿勢は崩さずに、俺は「なに?」と先を促した。


「なんか……いつもより、可愛いな」

「…………は?」


予想外すぎるセリフに固まっていたら、不意に手を取られる。

体がビクリと震えたけど、ブラックは気づかなかったようだ。
そのまま、俺の手を引いて歩き出す。


「今日は、絶対楽しませるから」

「……!」





気のせいだ。



笑ったブラックの表情が、優しく見えたなんて。



繋がった手を睨み付けて、俺はそっと息をついた。









(12/4/13)



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