真夏の真昼の流星群




水飛沫がキラキラと光を受けて輝く。

あまりの眩しさに、私は目を細めた。


「…あぢぃ…っ」


すぐ隣で上がった声に、つい笑みが零れる。
ステルス改造直後より随分伸びたヴァンの金髪が、水彩に負けじと煌めいていて。世界の鮮やかさを周囲に知らしめているようにすら感じる。

彼との関係は、ミッション完了後も未だ継続中だ。

ヴァンはロマンシアの活動の貴重な休みを見つけ、私はLBの仕事の合間を縫って。

彼と過ごす時間は、私の彼に対する気持ちみたいに、確実に積み重ねられていく。


(それにしても…)


改めて海辺に佇むヴァンを見つめると、一年半前の彼とは本当に別人になったと思う。…勿論、イイ意味で、だ。

潮風に揺れる髪をボンヤリ眺めていると、僅かに頬を赤く染めたヴァンの視線が、いつの間にかこちらへ向いているのに気づいた。


「…大丈夫?暑いなら、移動しよう…、…っ」


熱射病にでもなろうもなら大変だと焦って立ち上がろうとした私は、思いもよらない程の力強さでヴァンに引き寄せられる。


「ユラ…もーちょいでイイからさ、ここにいねぇか?」

「…で、も…」

「頼む。オレはヘーキだから、…な?」


私は帽子をかぶっているからいいけれど。
ヴァンの明るい色の頭は陽射し直撃状態だ。

言いたい事が伝わったのか、彼は素早い動作でパーカーについているフードを目深に被る。

そのまま、少し困ったように微笑んだ。


「オメェの目にさ、太陽の光がきらきら映り込んで…すっげぇキレイなんだ」


そう言って照れたように視線を反らすから、思わず頬が熱くなる。
ガラにもなく恥ずかしくなって、私は下を向いた。


「もうちょい、見ててぇんだよ……」


小さく、でも、しっかりと。
その言葉は私の耳に届く。

波の寄せる音だけが辺りに響いて、私たちはしばらく黙ったまま隣り合い座っていた。


不意にヴァンが動いた気配がして顔を上げる。


「…ユラは…、…いや、その…」

「…ヴァン?」

「…ぁ、いや、なんつーか…ユラは…オレのこと…、その…」

「…、なに?」


先ほど彼が被ってしまったフードのせいで、表情がわからない。
気になって、私は少し距離を詰めて覗き込んだ。けど。


「……っば!ば、ばっかやろ、おおお、おめ、オメェ…っちちち近すぎんだろ!!!」

「あ」


すごいリアクションで、距離を取られてしまった。

最近すっかり忘れていたけど、ヴァンは極度の照れ屋だったことを思い出す。


「……」


終いにはそっぽを向かれ、なんとなくムッとする。無意識に私は、両手を彼へと伸ばしていた。


「ヴァン」


「……っ!」


温かい両の頬に手を添えると、ビクリと動きを止めるヴァン。

変わらず煌めく彼の瞳に、人知れず笑みが浮かんだ。


「私にも、もっとみせて?」

「ユラ…」


「貴方は私を月の女神だって言ってくれたけど…私にとって、ヴァンは太陽みたいな存在だよ」


言葉足らずの私の、精一杯の気持ちを彼に伝えたくて。そっと身を寄せた。

優しく包み込んでくれる暖かさを感じる。


「…ユラにはオレが必要、ってことか?」

「うん」


すぐに答えれば、満面の笑みが降ってきた。


「オレにも、ユラが必要だ」




きっと、これから先も、変わらずきらめいて。








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(11/06/17)


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