Blue Melancholy





君を裏切った世界など、
滅びてしまえばいいと思った。

だが今は、
君の愛した世界を
命を懸けて守りたいと思う。








「ユラ……っ」

「わー、タクトに見つかったぁ」

「……っ、『わー』じゃないだろう!」



近頃、ユラの顔色が優れない。

当の本人は自覚がないのか、今日もフラフラと浜辺に出てきていた。

彼女がこの場所を気に入っていることくらい知っている。
だからよく姿を消す彼女が大抵は此処に来ることも知っている。



「…海風は身体に障る」

「……ありがと、タクト」



そっと上着を掛けてやれば、振り仰ぎ様に笑顔が返ってきた。
ユラの笑顔は水面に映る満月のように美しいが、どこか不安定だ。

今にも、波に融けていきそうな。


「……ユラ」

「なにー?」

「……その……だ、抱き締めてもいいだろうか、?」

「え?」



彼女の存在を感じたくて、無意識に言葉を紡いでいた。

キョトンと綺麗な夜空色の瞳が僕を真っ直ぐに射抜く。
我に返り、一瞬で顔に熱が集まるのを感じる。



「……ち、ちがっ、ちちち違うぞ!僕は決して、やっ、疚しい気持ちで言ったわけでは……っ」



「別にいいよ」



「は?」



「はい」と両手を広げて笑うユラは、僕の真意など知らないのだろう。

だが、そんな彼女だからこそ。



「……ありがとう」



触れ合う肌から感じる温もりが、堪らなく愛しかった。





この世界を愛する彼女を、僕は愛していた。










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(12/2/21)


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