歪愛
SとSだと、相性もバランスも悪いよね。
そう言えば、ドS君はニッコリ笑った。
「カナはSというより変態だろ?」
ちょ、おまえ。
「お疲れー」
「もっと心から労え」
いまの相談相手の学校から帰ってきたドS君にコーヒー渡しながら声を掛けたら、何かダメ出しされた。
おれがこうしてコーヒーとか淹れてくることすら奇跡に近いって分かってんのかな。
「ドS君、ワガママ言わないでー。おれがめんどくさがりなの知ってるでしょ?」
彼はほんとの名前で呼ぶけど、おれは此処では「オキラク君」だからね。
気楽に女のコ達の恋の悩みを解決しちゃう番長だから。
「フン……カナは早く番長を引退すればいい」
「ちょっと縁起でもないこと言わないでくれるー?おれ軽くニートになるじゃん」
「本業は学生だろうが」
ドS君が座ってたソファにおれも腰を下ろす。
そしたら当たり前のようにソファに押し倒されてしまった。
鮮やかな色の瞳が、おれを覗き込む。
「カナは俺のものだろ?」
「ちがいますー、おれはおれだけのものですー」
「ばぁか、おまえの全ては俺のものなんだよ」
ムカつくくらい整った顔が近づいて。
彼は綺麗に笑う。
「心も、身体も、な」
唇を塞がれて、強く求められたら。
おれに抵抗する意欲はない。
全くもって勝手な彼だけど、おれはそんな彼が好きだから。
でも、簡単にものになるのは、面白くないからさ。
「……っん、……カナ……、本当は俺のこと、好きなんだろう?」
だからおれは彼の問いにいつもこう応える。
「おれ、SだからMのコがすきだよ」
おれたち、相性、最悪だよね。
穢く笑えば、彼も負けじと笑みを深めながら告げるのだ。
「カナはSじゃなくて変態だろう?……俺に求められて感じる、変態だ」
そして、おれたちは歪んだまま愛し合う。
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もうすぐ恋愛番長2発売だよ!
(12/1/22)
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