JACK in theBOX


例えばそう。

それは吃驚箱のような。








「ユラ!ユラっ、ユラ見てみろよアレ!!」

「うんうん見てる見てる」

「まじパねぇわ…!まじかっけぇ…!!」


水槽の中を泳ぐマンボウを見てはしゃぐヴァンを横目に、思わず笑みを溢す。
その姿はまるで新しい玩具を見つけた子供。

何となく母親のような気持ちになって、これではデートというより親子遠足みたいだと心の中だけでぼやいた。



事の発端は、珍しくヴァンから遠出のお誘いがあったところまで遡る。





「……ユラ!し、しゅ、しゅ週末ああぁあ空いてねぇ?」

「今週末なら土曜も日曜も空いてるよ」


顔を真っ赤に染めて尋ねてきた彼に、私はいつも通りにそう答えた。
吃り過ぎだろうとは思ったが、それに突っ込むと話が進まなくなりそうだからスルーしておく。


「……!!ま、まじかよ……!」

「まじだよ?どっちか遊ぶ?」


デートという単語にもヴァンは過剰反応するから、意識的に避ける。

尋ねた私に、緊張感を帯びた表情の彼が少しだけ詰め寄った。


「……ど、どっちも……ていうのは、ダメか?」



「…………え?」


つまり。それは。


「…お泊まりするの?」



「……!!!」


あ。固まった。


それから暫くショートしていた彼だけど、私はまさかのお誘いに、笑みを隠しきれなかった。





「まじヤバかったな!あのアンコウ!!」

「うん。……マンボウね」


もう面白いからどっちでもいいけどさ。

興奮気味に話すヴァンの少しだけ後ろを歩いていたら、通り過ぎ様の通行人とぶつかってしまった。


「あっ…ぶね……大丈夫か?」

「う、うん、平気……ありがとう」


ぐらついた私を咄嗟に支えてくれる。


「気ィつけろよ?ユラはちっこいから、簡単に倒れちまいそうだ」


さっきまでマンボウではしゃいでた人とまるで別人。
逞しい腕に支えられて、私はただただ頷いた。

すると突然、手を取られ、自然と指が絡み合う。


「……っ、ヴァン?」


振り返った彼は、少しだけ照れた表情をしていたけど、その手が離れることはなくて。



「こうしてりゃー、誰かぶつかってもすぐに助けてやれるだろ?」


悪戯っぽく笑う彼に、今度は私の方が真っ赤になってしまう。


「それに、ユラともっと繋がってられるしな」



ずっと、一緒だ。

そう言って、ヴァンは私の頬に一つ、口付けた。





照れたり、怒ったり、笑ったり。

彼の一挙一動に心が動かされる。



そう。
まるで彼は、私のジャック。










――――――――――
未消化ー。すませ。
(11/12/13)

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