君へ恋。
「ん、まぁ……お疲れさま、侘」
イイ子いいこ。
いつも侘助が妹にしてるみたいに頭を撫でてあげると、くしゃっと泣きそうになったのがわかった。
侘助は、今日、失恋した。
「本当は、……結構前からわかってたんだ。あいつは、俺を受け入れてくれないだろうって」
「うん」
「俺、それに気づいたとき……何処かにあいつを閉じ込めてでも、手に入れたいって思った。……そんな事を考えた自分が怖いと思った」
「うん」
「……すごいツラいけど、また、兄妹に戻れてどこかホッとしてるんだ」
「うん」
クリスマスツリーのイルミネーションが、侘助と私を優しく照らす。
まだ少し顔色が悪いけど、彼は穏やかな表情をしていた。
「……今、こんなに気が楽なのは、ユラが一緒にいてくれるからだよ」
「……。このタイミングで気を使わなくていいよ」
「いやコレは本音」
妹ちゃんに嫉妬させるのに、私まで利用したことある癖に。
それを言うとたぶん本気で堕ちそうだったから黙って頷いといた。
あのときの侘助は必死だったからなぁ。
いまの侘助は憑き物が落ちたみたいな笑顔。
「ありがとう、ユラ」
「うん」
白い息が闇へと溶けていくのを見上げ、私は笑う。
「ん、まぁ……女は星の数ほどいるからね。侘にもすぐに妹ちゃん超えする素敵な女のコとの恋が訪れるよ」
冬の夜空に輝く星みたいにね。
いっぱい笑おう。
これからも。
「……」
「?どしたの?」
何か知ってるっぽい星座に夢中になっていたら、侘助ががっつりこっちをガン見していた。
「……ユラは……」
「うん?」
吐息に紛れるような小さな声。
少しだけ彼の方へと寄って。
耳を澄ました。
「……っ、いや、なんでもない」
「えぇ……っ?なに気になるんだけど!」
気にしないで、と侘助は笑った。
二人並んで、寒空を見上げる。
真っ暗で、寒くて。
きっと独りだったら泣いてしまったかもしれないほどの闇夜。
それでも、隣には君がいてくれるから。
「少しだけ、待ってて……」
「?……侘、なにか言った?」
「フフッ、なんでもないよ」
きっと、そんなに長くない。
君に恋におちるまで。
――――――――――
病んでルートも病んでないルートも好きだぜ。侘助。
(11/12/10)
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