Shall we…?
(イッチの星屑☆…をBGMにどうぞ)
「トキヤの新曲聴いた〜?」
「きいたよ〜っ、超爽やか!まさに王子様って感じ!!」
いや。
確かに爽やかだけれども。
というか。
これ、ホントにトキヤ?
HAYATOじゃね?
ポケットの中のiPodを握り締め、おれは心の中だけでそう突っ込んだ。
渋谷の街を足早に駆け抜け目的のビルに到着すると、やっと一息つく。
イヤホンを外して顔を上げれば、顰めっ面のイケメンが出迎えてくれた。
「遅いですよ、楢川」
「お疲れ、一ノ瀬。ちなみにまだ4分前だよ、遅刻じゃないから」
「せめて10分前にはスタジオに入るのが常識でしょう……」
相変わらず小姑だなぁ。
さっきまでiPod越しに「お姫さま」とか言ってた人と同一人物とは本当に思えない。
そうだ。
その件で一ノ瀬に言いたい事があったんだ。
「なぁ、一ノ瀬……新曲のコトだけど」
「ノーコメントです」
やはりそうか。
眉間の皺が増えた事で、あの曲が一ノ瀬にとっては不本意なものだったと悟る。
「の割に結構たのしそうに歌ってたよね。ノリノリだったよね」
「……っ」
単純に、トキヤっぽくないなぁと思うと同時に。
この人はホントに歌がすきなんだ、と伝わってくる曲だと思った。
「おれは結構すきだったよ」
「なっ……!」
「CD買ったし」
素直に伝えたのだけど、なんか微妙な顔をされてしまった。
うん。もうこの件に関しては触れずにおこう。
そう決めてビルの中へと進む。
一ノ瀬の横を過ぎるとき、小声でなにか呟くのが聴こえて。
おれは咄嗟に「なに?」と振り返った。
「……です…っ」
「え?」
「言って下されば……っCDくらい送ると言ったんです…!」
「…おぉぅ……」
相変わらず彼はクーデレだ。
おれは笑みを隠すことなく一ノ瀬に一歩近づく。
「……ありがと!次からお願いする」
思いっきり目を反らされたけど、横を向いた彼の頬がちょっと赤かったから、たぶん照れているだけだろうと勝手に判断する。
ぎゅ、と服の腕のとこを握ると何かビクッてされたけど気にしない。
「さ、中まで一緒に行こー」
「……ええ…」
「今日もよろしく、一ノ瀬」
腕を引きながらすぐに前を向いたおれは、この時、彼が困ったように微笑んでいたことなんて知らないけど。
きっと、君となら。
いつだって楽しいひととき。
さぁ、一緒に。
――――――――――
まさかの男のコ。
星屑☆〜初めて聞いたとき「え。おま、だれ?」てツッコんだ私。
(11/12/05)
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