露草を君へ
「カナ」
男性にしては割りと高めの声がおれを呼ぶ。
ゆっくり振り返れば、相変わらず読めない表情の一君。
そういえば、彼も非番だったと着流し姿を見て思い出した。
「何か入り用だった?」
「……、用事が無ければお前に会いに来てはいけなかったか」
彼に近しい人物しか分からないだろう不貞腐れたような声色。
思わず零れた笑みに、一君は僅かに眉を寄せた。
「ああちょうど今から、近藤さんに頂いた茶菓子で茶にしようと思ってたんだ。だが一人では味気無いなぁ」
おれが悪戯っぽい瞳を向ければ、ふぅと息を漏らす。
色気のある仕草だこと。
「一君と一緒なら美味いだろうがなぁ」
隣をついと指せば、戸惑うこともなく彼はそこへ腰を下ろす。
「では遠慮なく戴こう」
目に見えて微笑まれればやはり嬉しいもので。
おれも応えるように笑った。
(13/5/8)
りじぇ様の搾取っぷりが加速していますねいえいいんですもっとやってくださいお願いします。
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