笑顔ではじめて





「知ってる?社会人にとって大晦日なんてただの平日なんだよ?」

「ユラさん……まじクール」



コーヒー片手にカッコつけてみたら、伊織君から尊敬の眼差しを向けられた。
おねーさんはキミの将来が心配だよ。



「でも休憩中に伊織君の綺麗な顔見れたからちょっと元気でた」

「!……こんな顔でよけりゃいくらでも見ていーぜ?あ、ユラさん限定でだけどなっ」

「……安定のイケメン……」



テーブルに頬杖ついて。
その整った輪郭から成る彫刻みたいに精巧な顔つきに改めて見惚れる。
見ているだけで吐息が溢れそうになるくらい。
ほんとに、きれい。

こんな綺麗な子が、大晦日にわざわざ私に会うために街中のカフェに出向いてくれるなんて。
なんて贅沢な話なんだろう



「伊織君はこのあと……年越しはどうするの?」

「俺?とりあえずいつきのトコに寄ってから家帰ってソバ食うかな」

「そっか」

「で、さ。年明けたらユラさんに会いに行っていい?」

「へ?」



気づけば蒼の双眸がまっすぐ此方を見つめていて、思わずごくりと息を飲む。



「明日も仕事なのは知ってっけど……やっぱ、一年のハジマリには好きなひとの顔、見てーんだわ」

「!!」



一気に体温が上昇する。

いつもは子供っぽいとすら思わせる言動が多いくせに。
肝心なところはバッチリ決めてくるのだから。



「……会いに来てくれる?」



なるべく平静を装って、でも嬉しくて。
声が弾むのを自覚しつつそう告げれば、伊織君は眩しいほどの笑みを浮かべた。



「いちばん先に、会いにいくから」





来年のハジマリも、キミの笑顔で。










――――――――――
今年もあと11時間余りですね…!
(12/12/31)


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