それは、はじまりの合図!
颯爽と歩く姿は、まるで王子様。
だけど、一度口を開けばその態度は正に王様。
彼の名は方丈慧。
この聖帝学園の、生徒会長だ。
―――――…。
初めて彼と話したのは三年に進学してすぐの朝のこと。
その日は正門前で生徒会による抜き打ちの服装検査が実施されていた。
捕まってる男子グループの横をさりげなく通り抜けようとしたとき。
「待て!そこの女子!!」
よく透る声が、私を引き留めた。
「…私、?」
「そうだ。…お前は…classZの楢川だな」
「…げ。なんで知ってんの…」
こっちは生徒会長を知らない訳がないけど、あっちからしてみれば、私は大勢の生徒の中のひとりに過ぎない。
なのに、彼は私を知っていた。
普通の女子なら喜ぶところなんだろうけど、すこぶる生活態度の良くない私としては、生徒の見本となっているような彼とは相容れるはずもなく。
思わず呟いた文句は、しっかり会長サマの耳に届いていたらしい。
「お前はある意味有名だからな、極端に文系のみ成績のよい生徒がclassZにいると」
迷惑な話だ。
確かに、分かりやすくプライドの高いclassAの数名サマから絡まれたことは何度かあった。
だけど、それを方丈君が知っているとも思えないし、知られていたらいたで不愉快だと思う。
「…それで。なんのご用でしょう?」
こないだの実力テストで国語のみ学年三位だったことについては、新担任の北森先生がいっぱい褒めてくれたから、もう褒めてくれなくていいよ。
そう言うと、すごい勢いで顔をしかめられてしまった。
冗談なのに。
「僕たちが何の為にここに立っているのか、まさか分からないのか?」
「…なにせアホなんで」
今度は眉間に皺が寄る。
気が短いなぁ…と思いつつ、私は肩を竦めて見せた。
「冗談よ。服装検査でしょ。……私、特に問題ないと思うんだけど」
正直なところ、この学園は制服改造しまくってるヤツ多すぎて(会長、副会長含む)…私のスタイルなんて平々凡々だ。
むしろ元の制服の形を保ってる分、まともすぎるくらいだと言っても過言じゃない。
しかし会長サマにはお気に召さないポイントがあるようで。
ドコだと尋ねれば、至って真面目な顔で、こう答えた。
「スカートの丈が短すぎる!」
「……はぁ?」
私のスカートは膝上15cm弱だぞ!
しかも下にショーパンを履いてるし。
人様に迷惑をかけている訳じゃないのだから、ぶっちゃけ放っておいてほしい。
そんなことを考えていた私に、彼は予想外の台詞をぶつけてきた。
「まだ寒い時期なのにそんなに肌を露出して、風邪でもひいたらどうするつもりだ!!」
……お母さん???
生徒会長の口から出たとは思えない言葉に絶句してしまう。
完全に固まっていた私の肩に、ぽん、と手が置かれた。
「ほら、兄さんがこんなふうに言ってくれてるんだから。さっさとスカート丈なおしてね〜」
方丈君の弟で、生徒会副会長の方丈那智君の有無を言わせぬ笑顔に気圧され、私は無言のままスカートの丈を5cm正したのだった。
これが、方丈君と、私の出会い。
――――――――――
彼の天然っぷりが好きだ。
こちらも気が向いたら続く…かも。
(11/07/16)
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