005
ハコダテに同行させて頂いたとはいえ、私に出来ることなんて限られている。
ヴォクスに搭乗するのも、戦闘を間近で見るのも今回が初めてだ。
レッドアラートと共に出撃する準備に入った皆の表情を見て、何で彼らが戦わなければならないんだろうと、漠然と思う。
それが顔に出ていたのか、此方に気づいたヨウスケが少しだけ早足で近寄ってくる。
「ユラ」
「え、ああ、ヨウスケ」
気をつけて。
と続けようとした言葉は、最後まで出てこなかった。
ヨウスケが、当たり前のように私を抱き締めたから。
彼の肩越しに、皆が此方を見てギョッとしているのが見えた。
「よ、ヨウスケ……!」
「大丈夫だ。ユラは俺が守るから」
「……っ」
かぁっと、顔に熱が集まる。
ヨウスケからのこの言葉は、決して初めてじゃないのに。
なぜか今は一等恥ずかしくて、でも、嬉しくて。
全身に感じる温度が、心地好い。
ただ、彼が無事に戻って来てくれることを。
私は願うばかりだ。
「ヨウスケ、気をつけて、ね」
「ああ」
そして、彼は戦場へと赴く。
(12/12/11)
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