『Festalその蔭で』




七瀬君との約束は、学園祭明けの休みにということになった。





準備期間中にもずっと気になっていたのは、真壁君のこと。

学園祭といえば、紙花の一件で真壁君と先生の距離が近づく話があったはず。

それが彼の中で、尊敬の想いを強くさせるものになるのか……もしくは恋に変わるのか。



正直、後者でないことを望んでいる自分が、酷く滑稽に思えた。





そして、学園祭前日。








「……気になりすぎて残ってしまいました……」





辺りはすっかり薄暗くなり、前日とはいえ生徒の姿も疎らにしか見えない。

教室には何となく近寄り難くて、私は渡り廊下をウロウロしていた。

すると元気のいい足音が聞こえ、聞き慣れた声に名前を呼ばれる。



「あれれ〜?ユラちゃん、こんなとこでどしたのー?」

「…!!!ふ、風門寺く……」

「ブッブー!!はいやり直しー!あれれ〜?ユラちゃん、こんなとこでどしたのー?」

「……ご、ゴロちゃん、くん、こそ……」

「うっわ、それすっごいビミョー」



笑いながら「それでっ、ほんとに何してるの?あ、ちなみにゴロちゃんはハジメ捜索中だよ!」と話し掛けてくれる風門寺君に内心ドキドキしながら。
咄嗟に明日の最終確認をしていたと告げる。

よく考えたら他のB6の皆に出会ったときの言い訳もろくに考えていなかったことに気づく。
こんな廊下で確認て。
何を確認してたんだ私は。



風門寺君も一瞬固まったけど、何事もなかったかのようにまた笑顔になった。
きっと、彼は気を使ってくれたのだろう。



「ね。もしよかったらさ。ハジメとゴロちゃんと一緒に今から前祝いしない?」

「前祝い、ですか?」

「うん!明日のクラスXの喫茶店が大成功するお祝いだよ!」

「……!」



多分私がここで杞憂していたところで、なるようにしかならないだろうことは分かってはいたんだ。



真壁君のことを好きになった。
ただ、それだけのことで。

明日を迎えるのが怖くなってしまっただけの話。



自分は何も出来ないくせに、彼が先生に惹かれていくのを、見たくないと思う。





そんな醜い感情を振り切るように、私は風門寺君の誘いに頷いていた。










(12/12/7)


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