カラーレス・ボーイ





特別な才能なんてなくても、人は輝く。








「あれー?楢川先輩?」



まだいたんだー、と笑顔で振り返る彼は自主練でそこまでなるのかと思うほど汗だくだった。

でもよく考えたら宮地も木村も似たようなものだったな、と自然と笑みが浮かぶ。

高尾君の言葉に反応するように此方を見た緑間君が、不思議そうに首を傾げた。



「……先輩方なら、先に帰りましたが」

「知ってるよ。二人とも、お疲れさま」



タオルを渡せば、少し驚いた表情。



「可愛い後輩たちが頑張っていると聞いたので、優しい先輩が様子を見に来てあげたのだよ」

「ちょ、先輩語尾……!」



ブファ、と吹き出す高尾君とは対照的に、緑間君の眉間にシワがぐぐっと寄る。

ちょっとふざけすぎたかな。

謝りながらさっき買ったスポーツドリンクを二人に差し入れれば、どうやら喜んでもらえたみたいで。

汗を拭いながらドリンクを飲む高尾君。
相棒のエース君をからかいながらいつも飄々としている彼だけど、こうして残って練習している姿を見かけるのは実は初めてじゃなかった。



「……高尾君ってもしかしていつも残ってるの?」

「えっ」



切れ長の目とぶつかって、何故か心臓がどきりとする。
彼の目には、どんな風に世界が映っているんだろう。



「まぁ、残れるときは残ってますけど……」



チラリと視線が緑間君を捕らえる。



「うちのエース様に置いていかれるようじゃ、レギュラーなんて取れねーっしょ」



不敵に微笑む彼は、確かに努力の人だと。

その眼が告げていた。



何も言えずにただ彼を見つめていたら「先輩」、と低い声に呼ばれる。



「高尾は、こう見えて意外と人事を尽くす人間なのだよ」

「うわ、真ちゃんが珍しくデレた」

「別にデレてなどいない。事実を言ったまでだ」

「え……なにそれ超照れる」



笑い合う彼らは、きらきらと輝いて眩しくて。



私は自然と笑みが零れた。








きっと。



今年は去年よりもっと。
忘れられない試合が増えるはず。







「なに笑ってんの先輩〜」と照れたように笑う高尾君に笑みを返して。



私は確信していた。










――――――――――
20巻で3回泣きました。秀徳みんな好きだ。
(12/12/5)


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