触れて気づいて





「あっれ?楢川、何か今日ムダに血色よくね?」

「ムダいうなぁー」



ダルいなーとか思いながらダラダラと学校まで来たのはよかった。

だが一限が始まる前から既に虫の息て。

悪寒と関節痛及び咽頭痛と戦っていたら、朝練上がりらしい高尾が声を掛けてきた。



「ちょ、楢川っ?声死んでるって!」



フワリと自然な動作でオデコに触れた手は冷たくはなかったけど、なんか心地よくて。



「つーかすげぇ熱いし……!」

「あー、そのままー」



わしりと掴んだ手には力がうまく入らない。
これはあれだわ。
間違いない、風邪だ。



普段の私からしたら考えられないような行動について、後に高尾はちょっとときめいたとかほざいてたけど。

そのときの私は結構本気で意識が朦朧としていた。



「ぅー…」

「あ〜、っとりあえず抱えるからな?保健室に……」

「……たかおー」

「ん?どした?」



やべー軽々と抱っこされてら、とか。
何か黄色い声うるせーとか。
色々思うところはあれど。

とりあえず。
高尾の腕が心地よかったから。



「けがのこーみょ……だ」

「……はぁ?」



へにゃ、と力のない笑いが零れたついでに。
貴重なお姫様だっこなるものを堪能する余力もなく私の意識はそこで途絶えた。








「……びっくりするくらい可愛すぎたんですけど……」



その後、耳まで真っ赤にさせた高尾が私を運ぶ姿が目撃されたとか何とか。










――――――――――
風邪引いたときの人恋しさときたら。
(12/11/24)


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