前の席の男のコ。





「楢川はほんっとよく寝るよな〜」

「学校なんてさ、寝るための場所でしょ」

「ぶはっ!先生たち聞いたら泣くぜそれ」



高尾くんは、よく話しかけてくれる前の席の男子だ。

気さくで話しやすい。

あと授業中に寝ててプリント受け取らなくても怒らない。
絶対に私のこと起こさないし。



「高尾くんて優しいよねー」

「えーマジで?ちなみに楢川の思うオレの“優しいとこ”てどんなん?」



笑いながら尋ねてくる彼に眠い目を擦りながら答える。



「よく周りを見てて臨機応変とか上手で私は真似できない気配りさんなとこ、とか」

「へっ?」

「高尾くんの周りからの愛され度=高尾くんの優しさかなぁ」



彼の周りにはいつも明るく眩しくって。
だからといって常にふざけてる訳でもなく。

何故か人を惹き付けてやまない。不思議な存在。



ふと視線を上げると高尾くんが固まっていたから、思わず眉を寄せる。
私の頭の悪い言い方じゃ、分かりにくかったのだろうか。



「あの、つまり。高尾くんのこと好きだよ、って」

「すっ好き!?」

「うん!みんな好きになっちゃう優しさの持ち主だよね」

「ちょ、っと楢川、待っ!……っえ、やべ、ちょ、いやほんと待って……」

「え?」



気がつけば、すごい項垂れてるから。
完全に言葉選びを間違えたのかと焦る。

高尾くんみたいな良い人に不快な想いをさせるとか、そんな。



制された手の向こうに見える彼の表情を何とか見留めようと身を乗り出せば、ぱしと手首を掴まれてしまった。



「高尾くん?」



切れ長の綺麗な目が、私を捕らえる。

少しだけ赤く染まった頬がやけに目に焼き付いた。



「あんまそゆことばっか言ってるとオレ、うっかり告っちゃうかもよ?」

「す、きになっちゃうとか通り越して告っちゃうんだ!高尾くん、面白いねぇ」

「……楢川ちゃーん、意味、わかってないっしょ?」

「はい?」





告白する=もう好き、ってことなんだけど?










――――――――――
高尾くんはぴば!
(12/11/21)


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