『Lemon popの瓶』
ユラは決して美人なワケではないし、特別な何かをもっているわけでもない。
だが、俺はなぜかいつも。
彼女から目が離せないんだ。
家の窓枠の所に置かれた一本の瓶。
目に止まると、自然と笑みが零れる。
夏祭りの日。
帰り際に通り掛かった屋台で、ユラが買って俺にくれたものだ。
ただのガラスでできた瓶。
ラムネ、とユラは言っていた。
フタを開けたときにすごい勢いで泡が飛び出し、思わず取り乱してしまったが。
アイツが笑っていたから、まぁいいことにしておく。
陽光を受けて、ガラスが煌めく。
大して値打ちの無いものだと知っているのに。
それが輝く様は、ひどく価値の有るものに思えた。
窓から入り込む風は僅かな冷たさを帯び、秋の到来を告げていた。
(12/11/18)
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