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タクトと話した夜、ヒジリ君から電話がかかってきた。

その声はもういつものそれで、ホッしたけど結局何があったかは聞けず終いになってしまった。





『んでさー、ユウジのヤツ、ことある毎に俺に「妹に手を出したらコロス」的なこと言ってくんの』

「あはは、妹さんのこと大事にしてるんだね」

『そこかよ!俺に対するフォローは?!』



何事もなかったように振る舞う彼に態々蒸し返すことも出来ず。

ただ、彼にはもう、なるべく隠し事をしたくないと思って。
私の一方的な事情で、必要のない負担をかけたくないから。



「……ねぇ、ヒジリ君」

『ん?どした?』

「……、聞いてほしいことがあるの」



だから、ハコダテ演習の件で私が不安に思っていることの障りだけを話した。

ヨウスケの精神的な負担。
フェルナンデスとの関係。
あと、ユウジの家族の安全。

勘のいいヒジリ君だから、レゾナンスの危険性に関する話だと直ぐに気づいたみたいだ。



尋ね返したりすることもなく、静かに聴き終えたあと。
微かにため息を吐いた彼に、やっぱり話さない方がよかったのかと不安になる。
でもそれは杞憂だった。





『ユラ……、ありがとな』

「……ぇ、?」

『話してくれて』





ヒジリ君にとっては、些細な言葉だったのかも知れない。
だけどそれは、私の中に優しく響いて。
思わず泣きそうになってしまった。

近頃の私の涙腺はちょっとおかしい。

咄嗟に目元を拭うと、電話越しに笑う気配がした。





『今、泣くなよ?抱き締めてやれねぇし』










(12/11/1)


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