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明後日から、ハコダテ演習がはじまる。



ヒジリ君も参加するから、私は本格的にLAGに一人だ。

他のライダー候補生の子達とも交流はあったけど、毎日過ごすほどの仲じゃないし。
何よりここのとこヨウスケとヒジリ君がずっと一緒にいてくれたからか、距離を置かれているみたいだった。





帰ってきたとき、また、彼らは何かを失っているんだと考えると。

心が絞られるような痛みに襲われる。





今回、特にヨウスケとユウジにとっては。








「……ユラっ」

「っ!?」



いきなり名前を呼ばれて。

意識が浮上すると同時に、声で誰か分かった瞬間に心臓が早鐘を打ち出す。

振り返ったら、少し呆れた表情をした予想通りの彼の姿が目に入って自然と笑みが浮かぶ。



「……ヒジリ君、どうしたの?」








最近、やっと自覚したことがある。



自分の、想い。

この先きっと口にすることも、形を成すこともないであろう感情。



ヒジリ君を、好きだという気持ち。



私は、確実に彼に惹かれて始めていた。








「つかさっきから呼んでたんですけど?ずっと俺のコト無視しちゃうほど考え込んどいて「どうしたの」はなくね?」

「えっ、あ、ごめ……」

「はーいストップ。謝んなって」

「……う」



いつもの癖で謝り掛ければ、手と言葉で制されてしまう。

言い詰まった私を見て微笑うと、彼は思い出したようにこちらに両手を伸ばした。



疑問に思う間もなく。





「……、っ」

「しばらく会えねーから充電、な?」





頭を抱え込むように抱き締められてしまった。

そのまま、まるで猫みたいに私の髪に頬を擦り寄せるから。
完全に固まって動けない。

ガチガチに硬直していると、ヒジリ君が小さく告げた。



「なんかあったらすぐに連絡してこいよ……?」

「あ、の、……っ私は、大丈夫だから……」

「ユラの“大丈夫”は信用出来ねーわ」

「え、えぇぇっ?」





屈託なく笑う彼の人柄に、どれほど救われただろうか。





なのに私は、彼の真の幸せを、応援することが出来ないんだ。



タクトの生を取ることで、ヒジリ君の想いが破れることを、知っているのに。










(12/10/27)



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