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第三十三話「安息」
ぼんやりと淡い光で目が覚めて。
一瞬、どこにいるのかわからなかった。
「……ぇ、あ、れ……?」
ノロノロと体を起こすと、見覚えのあるクローゼットやデスク。
皆が「タクトといい勝負で殺伐とした部屋だ」と称した私の自室だ。
そこのベッドに、私は横になっていたらしい。
でも、なにか。
わすれて……。
「……よぉ、目ェ覚めた?」
「……!!!ひ、ひっヒジリ君……っ」
そうだった。
なんで忘れてた私。
ベッドサイドに凭れるように座るヒジリ君の顔を見た瞬間、やってしまったことがすぐに頭に過る。
全部、ほぼ全部、ばらしてしまったんだ。
サーッと、血の気が引く。
冷静になればなるほど、やってしまった感が次から次に溢れだしてきて。
陸に上がった魚みたいに口をパクパクする私に、ヒジリ君は首を傾げた。
「なんて顔してんだよ」
「あっ、あの、ヒジリ君、あの……っ」
「ぶはっ」
「……へっ」
「ワリ、ちょ、面白すぎて……(顔が……っ)」
思いっきり顔見て噴き出されたんだけど。
つか最後なんか「顔」って聞こえたんだけど。
「〜わっ、笑い事じゃないよ!」
「いーや、笑い事だわ」
「……っえ?」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。
必然的に下を向いた私のすぐ耳元で、ヒジリ君がそっと囁いた。
「俺はアンタの秘密を知った。つまりこれからは、ユラが独りきりで泣くこともないっしょ?」
「……え、ど、どういう……えっ?」
顔を上げれば。
眩しいくらいの、笑顔。
「ツラいときは呼んでよ。俺の胸で、いくらでも泣かせてやっから」
悪戯っぽく微笑む彼の瞳が、「本気だよ」って告げていたから。
私は笑いながら、
泣きそうになった。
(12/10/26)
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