鈍色コイン
「高尾くん……」
「いや、ンな悲しい目で見られてもさー」
クラスメートが知り合いをリアカーでひいていました。
轢く、じゃなくて引くの方で。
「つーか真ちゃんまじなんなん?!結局ガッコー帰ってくるまで引いちゃったじゃんオレ!」
「当然のことなのだよ」
仲が良いのは噂で知っていたけど、いや、ほんと何してるの。
私の幼なじみは。
「いや、てか何で当然のようにリアカーに乗ってるのよ、緑間」
「ユラも乗るか?」
「全力で断る。つか学校では名前で呼ばないでっていつも言ってるでしょ」
アンタのファンの子怖いんだから。
不愉快を隠さず顔に出したら、驚いたのは高尾くんの方だったらしい。
「あっれ?何、楢川と真ちゃんてそんな仲良かったワケ?え、まさか彼女??」
「ユラはユラだろう。なぜ苗字で呼ばなければならない?」
「高尾くん!違うから!!」
「え、真ちゃん楢川のこと名前呼びなのかよ?!」
「ユラはユラなのだよ」
「それさっき聞いたわ!緑間どや顔やめろ!」
それぞれ好き勝手な方向に喋るから、高尾くん→緑間→私→高尾くん←緑間←私……って会話が成り立っていないこと甚だしい。
何か変な誤解が生まれかけてるし!
「とりあえず真は一回黙ってくんないかな?」
「しかし……今日のおは朝で『沈黙は不吉』と言っていたからな……」
「勝手に日本の諺捩ってる番組の占いなんて信じてんじゃねーよ!!」
その辺りで、突然「ぶは」と堪えきれなくなった笑いを噴き出した音がして。
振り返ったら高尾くんが爆笑していた。
「え、え……?なに?」
「や、楢川、こんな面白いヤツだったのな」
「……お、面白い?」
「いつもは結構すました感じだったからさー。いや、全然、いい意味で」
にぱっと、真には絶対似合わない明るい笑顔が咲く。
「今みたいな楢川のが、オレは好きだわ」
「……っ!」
どストレートな言葉に、思わず動揺してしまう。
顔が熱くてパタパタしてたらいきなり真がリアカーから降りて駆けよってきた。
そしてなぜか高尾くんと私の間に立つ。
邪魔なんだけど。
高尾くんの顔見えないんだけど。
「なんだよ真ちゃん、こえー顔して」
「クッ、僅かの沈黙がこんな事態を招くとは……今日は蟹座は11位だったからな」
「いや、だからそれまじ関係あんのソレ?」
呆れ顔の私たちに、真が爆弾を投下したのは、直後。
「ユラは渡さないのだよ!!!」
「「…………はっ???」」
だれか私の幼なじみを止めてくれ。
――――――――――
黒バスあついよ。緑間さんも高尾くんも口調わからん。
(12/9/23)
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