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第二十八話「透明」
「ユラ!!」
「「……っ!」」
触れていた熱が、引いていく波のように離れて。
その切欠になった声の主を慌てて振り返った。
「タクト……」
「……、ユラ、さっきの話は……」
「あ、だ、大丈夫だよ!アキラさんには何も言わないから」
「「……は?」」
え?
「……え、……アキラさんのこと、話してたでしょ……?」
アキラさんのことを想うヒジリ君と、彼女に惹かれ始めてるタクトが衝突するのは仕方ないことだ。
でも、それを第三者に聞かれたら気まずいよね。
そう思っての発言だったのだけど、何でヨウスケまで驚いてるんだろう。
「……いや、あれは……」
「……、どれだけ鈍いんだ……」
「え、え?なに?」
呆れ顔の二人に何か間違っていたのかと問いかけるも、ため息をつかれる始末。
何でこうなった。
困ったように微笑むタクトが、そっと私の髪に触れた。
「……、キミはそのままでいてくれ」
何色にも、染まらず。
小さく呟かれた言葉の深意に、私が気づくことはない。
(12/9/19)
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