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第二十六話「盲目」
手足が痺れたみたいに動かなくて、先は聴きたくないのに聴覚だけはしっかり働いていた。
「……なんでそれをタクトに教えなきゃなんねーワケ?なに?俺が教えたらそっちも教えてくれるとか?」
「君が彼女を気にかけてるのは知っている」
「オイオイ…スルーかよ」
私たちの存在には気づいていないのか、タクトとヒジリ君は会話を続ける。
「……ただ、僕は中途半端に彼女に関わるなと言っているんだ」
「はぁ?……ンだよそれ。保護者ヅラかよ。アイツはオマエの所有物(もん)じゃないぜ?」
「!!違う…僕は、彼女を……」
不意に、強く手を捕られ。
強制的に方向転換させられる。
「……ヨ、ウスケ?!」
手を引いたのは隣にいたヨウスケで、驚いて出た声にタクト達も私たち二人の存在に気づいたらしい。
「……!ユラっ?!」
「……ぁ…」
名前を呼ばれ、視線がぶつかる。
けどそれは一瞬。
「行こう、ユラ」
有無を言わせない強い力で引き寄せられ、歩き出す。
らしくないヨウスケの荒々しさ。
レゾナンスのことが頭に過って、私は流されるように彼に続いた。
もう、頭がぐちゃぐちゃで、よくわからない。
(12/9/15)
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