故に。(side/S)
「ユラ…愛してる」
どれだけ愛の言葉を囁いても、俺はお前の隣に立てない。
どうすれば、そこに行ける?
悪戯の仕掛を終えて談話室へ戻ると、ソファで本を読むユラの姿があった。
期待を裏切らない状況に、思わず笑みが零れる。
彼女が遅くまでここで読書をしているのを知っていて、わざと時間をかけてきたのだから。
「……ユラ」
「…深夜徘徊なんて、いいご身分ね、ブラック」
名前を呼ぶと冷たい答えが返ってくる。
苦笑しながら近づいたら、なんとも言えない表情を浮かべた彼女と視線が絡んだ。
見上げてくるその瞳に、心臓が鷲掴みにされたような感覚にあう。
「どっかの誰かさんが相手してくんねーから」
「…知らないわよ」
そうだ。
ユラが俺を見ようとしないから、いつまでたっても様子を窺うように話しかける事しかできない。
「……なぁユラ、いい加減、素直になれって」
「……貴方に関して素直になることなんて一つもないわ」
「ははっ…超強気」
「……」
少しでも意識してもらいたくて、
「…そうゆーとこ、好きだぜ…」
と耳元で囁く。
お前は、どんな言葉を欲してる?
どうすれば、喜んでくれるんだ?
「……重みのない、言葉」
「……は?」
ユラの瞳に、俺の姿が映り込む。
だけど、切なく揺れるその両眸に、言葉を発することが出来なくなる。
「簡単に、“すき”なんて言わないで」
簡単、なんかじゃない。
そう伝えようとしたけど、咽の奥が抑えつけられたように、声が出てこなくて。
「貴方の、そういうところが嫌いよ、ブラック」
ただ、ユラの事が好きだって気持ちは、この先もきっと変わらないから。
例えお前が俺を嫌いでも、それだけは、変わらない。
――――――――――
続きドコロかシリウス視点で。やっぱり悲恋…?
(11/06/20)
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